堂安はその指摘について「あまり深く考えてません。別に自分たちが(いつも)スタメンだとも思ってない」と前置きしながら「ただ流れを変えなくちゃいけないとは思っていたし、ベンチから見ていてもっとアクションを起こせそうだなと感じたので、そこはなにか変えてやろうという気持ちでやりました」と振り返る。キルギス戦のスタメン組が”物足りなかった”という表現を選手が口にすることはない。だがアタッキングサードの迫力の違いがそのまま現在の位置づけを表していると言っても過言ではない。

 大迫、中島、南野、堂安に加えて計算のできる原口まではアジアカップの“当確ライン”だろう。9月から呼ばれ続ける伊東も濃厚。北川も持ち味を発揮できる準備が整えばアジアカップの戦力になりうるが、他にもアタッカー候補はおり“取捨”の判断が難しくなりそうだ。彼らはジョーカーとして考えることもできるが、親善試合はともかく公式戦ではスタメン組より途中投入される選手の力が明らかに落ちれば、勝負どころで選手交代に踏み切るのは難しい。

「力の差があるにしても、現段階では当たり前というか、普通のことかなと思います。経験の浅い選手たちと経験があるベテランの選手、実力差がある選手たちが同じピッチに立つことで相乗効果が生まれて、両方の選手たちの成長や融合が起きると思う。こういう今チャレンジしていることは、チャンスがあればこれからも続けていきたい」

 そう語った森保監督だがアジアカップを勝ち抜くメンバー選びはシビアに行うべきだ。今回はACL決勝の怪我で辞退した鈴木優磨。“森保ジャパン”の立ち上げから未招集の久保裕也、武藤嘉紀といった欧州組の実力者。さらに国内組でも今回は怪我で選考対象から外れたと見られる小林悠、川又堅碁あたりも改めて候補になるかもしれない。前線は2~3枠が入れ替わる可能性がありそうだが、森保監督がどういう見極めをしてアタッカー陣を形成するか、アジアカップに向け興味深いポイントだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。