つまり「緩急」の「急」が増えているというわけだ。その傾向を見抜いた上で、今回の対戦では「緩」を捨て「急」を狙うことをチーム内で意思統一した。ストレート、カットボール、高速スライダーの“真っすぐ系”に狙いを絞って、球を見極めていこうというのだ。

「緩い方の残像が残ってしまうと、速い球にかえって手が出なくなってしまう。だから、球を絞るのなら速い方」と打撃コーチの立花義家が明かしたその「狙い球」の徹底ぶりは、打者9人・5得点で逆転に成功した4回表の攻撃に、はっきりと表れていた。

 まず、先頭のアルフレド・デスパイネが150キロのストレートを、センターへはじき返して出塁。2死後、今CS初スタメンの8番・西田哲朗が151キロのストレートを右前へ運び、9番・甲斐拓也は四球を選び満塁に。ここで、今CS初スタメンの1番・川島慶三が、3球目の145キロの高速スライダーを引っ張って左前へ。これが2者を還しての逆転タイムリーとなると、続く2死一、二塁から2番・上林誠知は7球目、143キロのカットボールを左中間へはじき返す三塁打で、さらに2者が生還。2死三塁からは3番、ジュリスベル・グラシアルも4球目、140キロのカットボールをレフト前へ運び、これで3者連続のタイムリー。打者9人の猛攻で、この回一挙5得点。本塁打はなし、つないで、またつないでの連続攻撃で、菊地を見事に攻略。強打の西武のお株を奪う16安打、10得点での快勝には「打線爆発だったね」と球団会長の王貞治を大いに喜ばせた。

 西武は、今月6日のレギュラーシーズン最終戦から中10日。一方、ソフトバンク日本ハムとのファーストステージを2勝1敗で乗り切り、移動日を挟んで今シリーズに挑んでいる。「ウチは2つ勝って来て、勢いという点じゃ、ウチの方が今はあるだろうからね。西武は、試合をやっていなかったわけだから」と試合前、王はそう分析していた。

 自らの監督時代、2004年、2005年のいずれも、2位に4.5ゲーム差をつけてリーグ1位となったが、現行のように優勝チームに自動的に「1勝」が付与されるアドバンテージはなく、5ゲーム差以上をつけた場合という条件がついていた。これにわずかに届かない不運が重なり、3戦先勝だった当時の「第2ステージ」では、いずれも5戦まで持ち込みながらの敗退。「そういう運命だったんだよ」と振り返る王は、レギュラーシーズンの終了から、ファイナルステージ初戦までの“試合のできない期間”を過ごす難しさを、誰よりも実感している。

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