菊池雄星(手前)から適時打を放ったソフトバンク上林誠知(奥) (c)朝日新聞社
菊池雄星(手前)から適時打を放ったソフトバンク上林誠知(奥) (c)朝日新聞社

 転んでも、ただでは起きない。CSファイナルステージ初戦のソフトバンクはまさに、その格言を地でいく快勝劇を見せた。そこには“19日前の屈辱”から導き出した教訓を、チーム全体で共有し、それを貫き続けた成果だった。

 西武の先発は、絶対的エースの左腕・菊池雄星。150キロ超のストレートに、140キロ台の高速スライダーと打者の手元で動くカットボール。これにチェンジアップと大きく落ちるカーブが加わってくる。その「緩急」が、球界を代表するサウスポーの攻略をより難しくしている。

 その菊池を、ソフトバンクはそれこそ「カモ」にし続けてきた。入団以来、菊池はソフトバンクに全く勝てなかった。16勝を挙げて最多勝、2点台の壁も破る1.97で最優秀防御率のタイトルを獲得した2017年でさえも、対ソフトバンクに限れば4戦4敗。そのお得意様から、ソフトバンクが初めて黒星を喫したのは、今年9月28日のメットライフドーム。菊池との通算19試合目の対戦で、7回3失点(自責1)に抑えられ、白星を献上していた。

 それから19日。投げる菊池にすれば、13連敗を喫した天敵への悪いイメージは、完全に払拭されている。対するソフトバンクにすれば、その初黒星以来の対戦となる。菊地にすれば「もう怖くない」と思えるようになっているだろうし、ソフトバンクからしてみれば、やっかいな敵に変貌したと言っても、決して過言ではないだろう。

 それだけに、ソフトバンクは今回の対戦に備え、菊池を改めて、徹底分析していた。ファーストステージを2勝1敗で乗り切り、ファイナル進出を決めた翌16日。空路東上する前に、本拠地・福岡ヤフオクドームでの投手陣の練習に姿を見せた監督の工藤公康は、ファイナルステージでの戦いを展望する中で、前回の対戦を通して、菊地のピッチングの“変化”に気づいたといい、それを説明してくれた。

「大きくは変わっていない。でも、菊池君のピッチングスタイルの中で、前は真っすぐとスライダー、たまにカーブだったのが、カットボールが増えてきた。そこが(前回の対戦で)苦労したところだと思います」

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「狙い球」の徹底が4回に功を奏す