西武にとっては、10年ぶりのリーグ制覇だから、ファイナルステージからのスタートも10年ぶりだ。一度は逆転した3回、源田壮亮が適時三塁打、浅村栄斗も中前タイムリーを放ち、4回には栗山巧、6回には山川穂高がそれぞれ本塁打を放ったが、いつになくつながりを欠く淡泊な攻撃に映ったのは“待っていた10日間”の影響もあるのかもしれない。それを見越してのことだろう。工藤は6点をリードした7回からの3イニングで、まず武田翔太、続いて左腕の嘉弥真新也、セットアッパーの加治屋蓮、ストッパーの森唯斗と、今CSでの「勝利の方程式」を繰り出した。

「これからも試合は続く。最後に1点、2点取られると次の日につながる。しっかり抑えたかった」と工藤は快勝発進の中でも最後まで手綱を締め続け、西武打線に“復調のきっかけ”を与えようとしなかった。この白星で、西武のアドバンテージの1勝分を“消す”形となり、まず「1勝1敗」のタイに持ち込んだ。

「ここからがもう1度。どっちが、あと3つ勝つかということ。まずは明日。先を見ないで、明日のことだけを考えます」と工藤がいえば、王も「明日からが勝負だね。とにかく一戦一戦だから」と力説した。コンディション不良や右肩痛からの2軍調整が続き、およそ2カ月ぶりの1軍復帰となった主将・内川聖一も、7回に代打で登場するといきなり中前打を放つなど、ファイナルステージで過去3度のMVPを誇る、頼りになる男もここで戦列に戻ってきた。初戦の勝ちっぷりを見ていると、2位からの下克上を目指すソフトバンクの「勢い」が、さらに増していきそうな気配が漂っている。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。