年収を抜かれた妻に海外勤務と言われ、キレた40代夫が抱くコンプレックスの深層心理 (3/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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年収を抜かれた妻に海外勤務と言われ、キレた40代夫が抱くコンプレックスの深層心理

連載「男と女の処世術」

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西澤寿樹dot.#働き方#夫婦#結婚
夫婦の年収が逆転することで、関係を見直さなければいけないケースもある(※写真はイメージ)

夫婦の年収が逆転することで、関係を見直さなければいけないケースもある(※写真はイメージ)

「しかし残念ながら、秀則さんが奈津子さんが働くのを『許す』という構図は、お父さんがなさっていたことと同じですよね」

と申し上げると、

「ああ、そうですね……」

とおっしゃいました。

「どんなお気持ちですか?」

とお伺いすると、

「妻の実家のほうが金持ちですし、大学も妻のほうが上ですし、彼女は高校時代に留学もしているので英語にも不自由はありませんが、私は何も取り柄がないんです」

とおっしゃいました。突然こういうことが出てきたのは、秀則さんが奈津子さんが働くことを「許す」というように奈津子さんの上に立とうとすることと、自分には取り柄がないという思いには密接な関係があると考えられます。びっくりしたのは、奈津子さんです。

「取り柄がないなんてわけないじゃない。取り柄がない人と私結婚したりしないです」

とおっしゃいます。

「だからですよね」

と私は言いました。奈津子さんは取り柄がない人とは結婚しないのに、秀則さんの認識では自分には取り柄がないと思っている。それらの前提から合理的に導かれる結論は、奈津子さんは結婚を維持してくれない、ということです。

だからこそ、結婚が崩壊しないように強権的な力を維持したいというモチベーションが発生するのです。

 意外かもしれませんが、ここで奈津子さんがしてはいけないことは、秀則さんにも取り柄があると、説得することです。

 できることがあるとすれば、「俺の収入がメインなんだから」という秀則さんの言葉の背景には、こういう気持ちがあったのだとわかることです。最初は頭の理解でもいいですが、感覚としてわかるところまで行ければ最高です。

 もちろん、だから許しましょう、とか水に流しましょうということではありません。その言葉でどれだけ奈津子さんが傷ついたか、というのは奈津子さん側の事実で、そういう言葉を発する背景にどういう気持ちがあったか、というのは秀則さん側の事実。両側の事実を認識する、というだけです。

 それが協調の第一歩です。(文/西澤寿樹)

※事例は事実をもとに再構成しています


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西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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