咄嗟の“グラブトス”の珍プレーをめぐる判定が物議をかもしたのが、12年のセリーグ最終ステージ、中日vs巨人(東京ドーム)第2戦。

 1回表、巨人の先発・ホールトンは、中日の先頭打者・大島洋平の投ゴロを処理した際に、ボールがグラブの網の部分に引っ掛かり、抜けなくなってしまった。

 慌てて一塁に向かって走ったが、打者走者の大島は俊足で間に合いそうにない。そこで、「えい、ままよ!」とばかりに、ファースト・亀井善行にグラブごと放り投げた。

 亀井がグラブをキャッチしたとき、大島はまだ一塁ベースに達しておらず、タイミング的にはアウトだったが、橘高淳一塁塁審の判定は「セーフ!」。原辰徳監督の抗議も、亀井が脇の下でグラブを抱え込んでいたことから、「(手、またはグラブで)正規の捕球をしたとはみなされない」と退けられ、内野安打となった。

 さらにホールトンは、1対0で迎えた2回にも珍プレーの主役となる。無死満塁のピンチで、本塁近くでバウンドし、足元に転がってきた伊藤準規の打球を自分でファウルと判断し、送球が遅れたばかりでなく、プレー中なのに「自打球だ」と抗議して、同点に追いつかれてしまったのだ。直後、大島のニゴロの間に逆転を許し、敗戦を招いたとあって、原監督は「あれは自分で決めるべきプレーではない」とカンカンだった。

 “現役最後の打席”に賭ける執念が、“奇跡”とも言うべき珍プレーを誘発したのが、05年のパリーグ第2ステージ、ロッテvsソフトバンク(福岡ヤフードーム)第5戦。

 勝ったほうが日本シリーズ進出という天王山の一戦、1対2とリードされたロッテは8回、同年限りで現役を引退する初芝清が代打で登場した。

「オレが塁に出ないと、そのまま引退(試合)になってしまう。優勝するためにも、絶対出塁してやるという気持ちでした」

 チームメートから「(三瀬幸司は)初球必ずスライダーで来る」とアドバイスされていたのに、そのスライダーを見逃し。「どうしよう?」と気持ちの整理がつかないまま、次の球にバットを出したら、三遊間にボテボテのゴロが転がった。

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サードゴロがまさかの