中日・大島の打球がグラブに挟まってしまったホールトン(2012年撮影) (c)朝日新聞社
中日・大島の打球がグラブに挟まってしまったホールトン(2012年撮影) (c)朝日新聞社

 2018年のクライマックスシリーズも始まったが、日本シリーズをかけた熱い戦いの裏で、過去には意外な珍事件も起きていた。今回は、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、クライマックスシリーズにまつわる“B級ニュース”を振り返ってもらった。

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 ホームラン性の打球は、どんなに会心の当たりでも、判定されるまで自分で決めつけてはいけない。そんな“教訓”を生んだのが、2010年のパリーグ最終ステージ、ロッテvsソフトバンク(福岡ヤフードーム)第3戦。

 1対0とリードしたソフトバンクは、8回2死から4番・小久保裕紀が左越えに大飛球を放った。

 ホームランを確信した小久保は、「やったぜ!」とばかりに派手なガッツポーズを見せて、ゆっくりとした歩調で一塁へと向かった。この日のソフトバンクは、初回に挙げたスミイチの1点だけとあって、どうしても追加点が欲しい場面での主砲の快打には、ファンも興奮したはずだ。

 ところが、スタンド入り間違いなしと思われた打球は、もうひと伸び足りず、フェンスに跳ね返って、グラウンドに戻ってくるではないか。それを見た小久保が慌てて全力疾走モードにギアチェンジしたときには、後の祭り。普通に走っていれば、二塁打だったのに、ゆっくりペースが災いし、レフトオーバーのシングルヒットという珍事に……。そして、次打者・オーティズも右飛に倒れ、この回も無得点で終わった。

 それでも、最終回は守護神・馬原孝浩が3者凡退で虎の子の1点を守り切り、結果オーライだったものの、CS史に残る珍プレーを演じてしまった小久保は「入ってへんし、走ってへんし、穴があったら入りたい」と恥じ入るばかりだった。

 ロースコアの接戦を制して、2勝1敗と、CS導入後、初の日本シリーズ進出に王手をかけたソフトバンクだったが、第4、5戦と連敗し、通算6度目のCSも敗退。小久保も第5戦で最後の打者になってしまった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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ボールがグラブに挟まり、そのままグラブトス