金足農・吉田輝星 (c)朝日新聞社
金足農・吉田輝星 (c)朝日新聞社

 9月3日に開幕した野球のU18アジア選手権。春夏連覇を達成した大阪桐蔭の主力選手や、夏の甲子園大会で一躍スターとなった吉田輝星(金足農)などが出場するため、例年以上に高い注目度を集めている。しかし毎年のことではあるが、この時期に行われるU18の国際大会における選手選考は疑問が残る点が多い。そこで今回は選考における課題、他に選ぶべき選手についてまとめてみた。

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 まず、感じる疑問点は、選ばれた選手全員が春・夏の甲子園大会に出場した選手という点だ。昨年行われたU18のワールドカップでも同様であり、過去を遡っても甲子園出場を逃した選手が選ばれているケースは稀である。毎年行われるドラフト会議の結果を見れば分かるように、甲子園の出場はあくまでチームの話であり、直前の大会に出場したかどうかと選手の力量は全く別の問題である。

 もちろん直前の大会に出場していたということが、プラスに働くこともある。それは試合勘の問題だ。地方大会で敗れた選手は本格的な実戦から1カ月程度離れることになり、試合の感覚を取り戻すのに時間がかかるという不安要素がある。今大会でも唯一地方大会で敗退した市川悠太(明徳義塾)は、その感覚を取り戻させる意味もあって、8月28日の大学ジャパンとの壮行試合では、最も長い3イニングを投げていたが、選抜時に比べるとボールの勢いが感じられなかった。また、選手のスケジュールを確保するのが難しいという問題もあるだろう。

 しかし、こうしたマイナス点を考えても、甲子園未出場選手からも幅広く選考した方がより強い代表チームができることは間違いない。以前は高校の監督と代表監督を兼任していたが、昨年のワールドカップから「専任監督」を設置するようになり、より多くの選手を視察する機会はあったはずである。スケジュール確保の問題も、地方大会が終了した時点で候補選手には通達しておくことでクリアすることも可能だろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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