力いっぱい校歌を歌う金足農ナイン (c)朝日新聞社
力いっぱい校歌を歌う金足農ナイン (c)朝日新聞社
金足農の快進撃を特集した日本農業新聞の紙面。右下がエース・吉田輝星投手の祖父・理正さん
金足農の快進撃を特集した日本農業新聞の紙面。右下がエース・吉田輝星投手の祖父・理正さん

 第100回全国高校野球選手権大会の準決勝で、金足農(秋田)が日大三(西東京)に2-1で勝利し、秋田県勢としては1915年の第1回大会以来103年ぶりの決勝進出を決めた。21日午後2時からの決勝では、春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)に挑む。

【写真】吉田輝星投手に声援を送る祖父の理正さん

 
 ツイッターでは春夏通算3回の優勝を誇る日大三を撃破したことで「江戸城陥落」、準決勝第2試合で大阪桐蔭が勝利した後は「(決勝は)大坂城攻め」との投稿もあり、「金農旋風」は全国に広がっている。ご当地・甲子園でも金足農のタオルなど記念グッズ類が飛ぶように売れているという。
 
 高校日本代表クラスの選手がそろった「銀河系スター軍団」と呼ばれる大阪桐蔭に対し、金足農は自他ともに認める「雑草軍団」。野球部関係者には農家も多く、生徒による田植えは学校の名物行事だ。レギュラー全員が秋田県内の中学の出身という「地産地消ナイン」で勝ち進んできた。選手の宿舎には秋田県産米「あきたこまち」が300キロ届けられ、選手たちの体力の源となっている。
 
 そんな選手たちの横顔を、独自の視点で報じている新聞がある。日本で唯一の日刊農業専門紙である日本農業新聞だ。
 
 17日の横浜戦で逆転3ランを打った高橋佑輔内野手(3年)については、畜産動物を扱う生物資源科で学んでいることを18日付紙面で紹介。高橋選手は鶏の飼育を担当し、「週2回、“バット”を“スコップ”に持ち替え、鶏舎の掃除や餌やりをしている」という。体力面で負担の大きいフン掃除も、一輪車を走らせながら積極的にこなしていることを伝えた。
 
 選手やOBだけではなく、快進撃に沸く農業関係者も積極的に取材している。農園で働く79歳の女性の言葉は「生きていてよかった。生徒の頑張りを見てこれからも農業を頑張ろうと思える」。読んでいるこちらがその人を応援したくなるような内容だ。
 
 一躍今年のドラフトの目玉となったエース・吉田輝星投手(3年)の記事では、祖父が元JA職員で現在は「幸水」や「かほり」などの梨を栽培していることを報じた。その祖父がスタンドで喜ぶ姿を写真付きで掲載した時の見出しは「農一筋 祖父感涙」。吉田投手が1回戦の鹿児島実業戦前に「梨をもらったり練習を手伝ってもらったりしたじいさんを甲子園に連れて行きたいと思っていた。全力で戦う姿を見せたい」と、家族や農業との関わりについて語っていたことをあえて取り上げた。
 

次のページ
準決勝進出からは”昇格”