しかし、さすがは全国制覇5度の実績を誇る強豪。その裏、筒香、中原北斗、松本幸一郎、高浜卓也(現ロッテ)の4連打で3点を返し、あっという間に3点差に詰め寄った。

 だが、気持ちを切り替えた菅野は5回以降1失点と踏ん張り、東海大相模が6対4で逃げ切り。結果的に自ら記録した振り逃げ3ランの3点が勝利をもたらした。

 前年、県大会決勝で敗れた宿敵に雪辱をはたした菅野は「“打倒横浜”でやってきました。横浜の選手の分も背負って、必ず甲子園に行きます」と誓ったが、決勝で桐光学園に8対10と打ち負け、チームメートの1番打者・田中広輔(現広島)ともども無念の2年連続決勝戦敗退となった。

 ピッチャーのサヨナラボークは甲子園の試合でも見られたが、ボークが記録されるのは投手に限った話ではない。

 捕手のボークでサヨナラ負けという珍幕切れとなったのが、2017年の徳島県大会1回戦、阿波vs城東。

 1対1で迎えた9回裏、1死三塁のピンチに、阿波の鳴川真一監督は次打者の敬遠を指示した。

 しかし、捕手がキャッチャースボックスの外に出た状態で投手が敬遠のボールを投げたことから、ボークが適用され、三塁走者がホームイン。まさかのサヨナラゲームとなった。

 これは敬遠の際にだけ適用されるルール(野球規則6.02)で、1年生の捕手はルールを知っていたようだが、一打サヨナラの緊迫した場面で「急いでしまった」という。

 野口浩史県高野連審判部長も「約30年間野球の審判に関わってきたが、今回の事例は聞いたことがない」と驚くほどの珍事。鳴川監督も「何がボークになるか、選手たちにきちんと伝えられていなかった。私の責任です」とコメントした。

 また、勝敗が分かれる重要局面とあって、球審も捕手に対して事前に注意するのは公正中立を欠くという判断から、ルールを優先する形となった。

 事情はどうあれ、申告敬遠制ならあり得ない悲劇だが、高校野球では今年も従来どおりの敬遠が採用されている。敬遠の場合は、捕手の立ち位置にも要注意だ。

 今夏、阿波は初戦を8対0とコールド勝ち。前年の雪辱をはたした。

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まさかの“ベース踏み忘れ”