地震の後にも、SNSで通常の投稿した女優の長澤まさみさんや被災地へのメッセージを綴った西内まりやさん、菜々緒さん、500万円を寄付した紗栄子さんも批判されました。特に被災地の状況をブログに綴っていた井上晴美さんは『グチりたいのはお前だけじゃない』などと誹謗中傷され『発信やめます』と投稿するまで追い込まれてしまいました。しかしその後、それらが“不謹慎狩り”として問題視され、攻撃を仕掛ける人を批判する動きがネットの言論やメディアの中にできてきています。これは一つの進化だと言えるでしょう」

 実際に、拡散した情報で混乱をまねいた冒頭の千鳥ノブのツイッターには批判もあるものの、「悪気がないのは十分にわかる」「現地に行けずにもどかしい気持ちもお察しします」など、冷静なコメントも多い。

 そもそも「不謹慎」という言葉が多く使われるようになったのは、東日本大震災以降だという。ヤフーにおける「不謹慎」という言葉の検索数推移をみると、震災直後に急増。その後に減っているものの、2011年3月11日の前後を比べると明らかに高水準になっている。つまり、ネット上では以前に比べて「不謹慎だ」という理由で批判することのハードルが下がっているのだ。

 炎上に参加する人の特徴として、従来は「教養が低く、暇を持て余している独身のネットヘビーユーザー」とイメージされることが多かったが、山口氏らの分析の結果、年収が高く、係長クラス以上の男性が参加しやすいことがわかったという。その動機は6~7割が「正義感」だった。ただ、その判断基準は個人的な価値観によるものだ。

 それは社会にどんな影響を与えるのだろうか。

「ミクロ的には、批判を受ける発信者の心理的な負担が増えること。特に災害時だからこそ心無い言葉が突き刺さり、負担は大きくなります。さらにマクロ的に見ると、表現の萎縮につながるという負の影響があります。ネット上では、お忍びで現地にボランティアに行くなど不言実行が好まれる傾向があります。しかし、仮に売名目的だったとしても、ファンが共感したり、良い情報が手に入ったりするなど、明らかに間違った情報以外はプラスの影響はあってもマイナスは無いはずです。ヒカキンさんが黙って募金するよりも、動画で実演することでファンに訴えかける力は強く、社会にとって実益があるでしょう。それが彼らの存在意義でもあるのです」

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平子理沙の炎上では1人で100件以上も書き込み