マツコ・デラックスさん (c)朝日新聞社
マツコ・デラックスさん (c)朝日新聞社
ビートたけしさん (c)朝日新聞社
ビートたけしさん (c)朝日新聞社

 現在、テレビ東京で「無理矢理、マツコ。テレ東に無理矢理やらされちゃったのよ~」というプロジェクトが進行している。テレビ東京の番組に長年出ていなかったマツコ・デラックスが、5月19日から6月10日にかけて深夜に放送される5つの番組に立て続けに出演するというもの。マツコはそれぞれの番組の企画内容を一切聞かされないまま収録に臨んでいるという。

【5日連続でテレ東の特番に出演したビートたけしさん】

 近年、このようにテレビ東京が大物タレントを一本釣りする形で特番を放送するケースが増えている。例えば、昨年10月には5日連続で『おはよう、たけしですみません。』というビートたけしの特番が放送された。水道橋博士と太田光を両脇に従えて、政治から芸能まで幅広いジャンルの話題をノンストップでしゃべり続けた。カツラ疑惑のある芸能人の実名を出したりする際どいギャグを連発して話題になった。

 また、2012年9月には、とんねるずが出演する『ハレバレとんねるず 略してテレとん』という特番も放送された。自分たちのレギュラー番組以外にほとんど出ることのなかった2人がテレビ東京で特番を行うというのは異例の事態だった。

 テレビ東京は、ほかの民放各局と比べると会社の規模が小さいため、制作費も少ないと言われている。テレビ東京の伊藤隆行プロデューサーは著書『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』の中で「他局の10分の1ぐらい」と語っている。それだけ予算に開きがあると、視聴率で万年最下位をキープしてしまうのは無理もない。しかし、最近ではゴールデンの視聴率で民放4位のフジテレビに肉薄するなど、健闘が目立っている。

 テレビ東京はネット上でもやたらと評判がいい。ネットの世界では弱い者に味方をする判官びいきの風潮があるため、万年最下位のテレビ東京はむしろ温かい目で見られることになる。自然災害などの重大な事件が起こったときにも、テレビ東京だけはニュース速報を流さずに普段通りのアニメを放送していたりする。そのマイペースぶりも愛される要因となっている。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
テレ東の番組作りのノウハウとは?