ビートたけし(c)朝日新聞社
ビートたけし(c)朝日新聞社

『SASUKE2018』(TBS系)が3月26日、放送された。100人の挑戦者がさまざまな障害物が仕掛けられたステージに挑むこの番組には熱心なファンが多い。その人気は国内だけにとどまらず、日本の番組が世界165の国と地域で放送されている上に、アメリカでは『American Ninja Warrior』という現地版の番組まで制作されている。『SASUKE』は視聴者に愛されているだけではなく、出場者にも思い入れが強い人が多い。単なる1つのテレビ番組がこれほど長年にわたって愛されている理由は何なのか。

『SASUKE』にはルーツとなる番組が2つあるのではないかと思う。1つは、1986年から1989年に放送された『風雲!たけし城』であり、もう1つは1995年から2004年に放送された『筋肉番付』である。どちらも、挑戦者が体を張ってさまざまなゲームや競技に挑むという形式の番組である。

『風雲!たけし城』は、一般人の参加者が池の上の飛び石を渡ったり、不安定な吊橋を歩いたりするステージを攻略して、最終的に「たけし城」の城主であるビートたけしと対決をする、という内容だった。一般人が体を張った大掛かりなゲームに挑戦するという点は『SASUKE』と共通している。

 特に、テレビカメラに対して出場者が横に動いていくようなゲームでは、テレビのフレーム内でちょこまかと動き回る彼らの姿は当時流行していたテレビゲーム(ファミコン)の「スーパーマリオ」にそっくりだった。いわば、「ゲームの世界を実際の人物で再現する」というところに演出の核があったのだ。

 ただ、『たけし城』では出場者一人一人のキャラクターが詳しく紹介されることはなかったし、出る側も見る側も遊び半分で番組を楽しんでいるようなところがあった。

 一方、『筋肉番付』では、プロのアスリートや体力自慢の一般人がさまざまな競技に挑む。その競技の中には、ボールを投げてパネルを打ち抜く「ストラックアウト」のように、純粋にスポーツの実力を問うようなものもあれば、ゲーム的な要素が強いものもある。いずれにせよ、この番組では出場者が競技に挑む姿をお遊びなしの真剣勝負として見せていた。いわば、バラエティ番組の中にスポーツ番組の「真剣勝負」という要素を持ち込んだのだ。この演出が当時は画期的だった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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