このアプリを使った医師対医師(D to D)のコミュニケーションは、すでに多くの恩恵をもたらし始めている。脳卒中に関しては、院内の使用において約30分の治療時間短縮につながるという結果が出ており、さらには、異なる病院間の連携においても、手術までの時間が約3分の1に削減したことを報告している大学病院がある。

 コミュニケーションが医療に大きな変革をもたらすことは、ICTを用いて証明されつつある。医療が医師一人ひとりによる孤独な闘いだった時代は終わりを告げ、本当の意味で、チームで患者を見守る時代に入ったと言えるのではないだろうか。チーム医療が有用であることは以前からわかっていたが、ICTとスマートフォンの普及によりそれを支えるツールが登場し、実際に情報交換やコミュニケーションを支えられるようになった。これは、急性期医療だけではなく慢性期疾患のフォローや希少疾患(珍しい病気)の治療、さらには介護医療のコメディカル(看護師、ヘルパーなど)とつながる医療にも大きな恩恵をもたらすと考えられる。

 ブラック・ジャックのような無免許医師なんて、夢の世界や漫画の中だけの話かもしれない。しかしこれからの未来、医師免許を持たない存在が、人々を救う時代がやってくると言える。

 昨今話題のAIで例えてみよう。

 AIとは、大きく二つに分類できる。鉄腕アトムのように人と会話し、汎用型の知性を備えた「汎用型人工知能」と、特定の分野に特化した「特化型人工知能」である。汎用型人工知能の先駆けは、アップル社の「Siri」やマイクロソフト社「Cortana」がいい例ではないであろうか。人間のような会話にはまだほど遠いが、ウェブを通じて様々な情報にアクセスして、回答をユーザーに返してくれる。いずれはこの精度が高くなって相手の言っていることがしっかりと理解できるようになり、人間並みの会話に近づいていく時代がやってくるだろう。

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