高尾洋之医師「私たちが今まで気づかなかったことを気づかせてくれるシステムとして、ICTやAIが私たち医師を助けていくだろう」
高尾洋之医師「私たちが今まで気づかなかったことを気づかせてくれるシステムとして、ICTやAIが私たち医師を助けていくだろう」

 少子高齢化が進む日本で、今後、医療の現場はどう変わっていくのか。また、テクノロジーとのかかわりは――。AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、医療の現場でテクノロジーを積極的に活用している東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座准教授の高尾洋之医師に、医学部を志望する学生に向けて「これから求められる医師像」を示してもらった。

*  *  *

 漫画家で医師でもある手塚治虫氏が書いた作品『ブラック・ジャック』。私が小さい頃に読んでいた作品の一つである。

 主人公のブラック・ジャックは、黒いマント姿につぎはぎの怖い顔をした天才手術術者。医師免許を持っていない無免許外科医師で、法外な料金を代償に、時には弱いものの味方をしながら様々な怪我や難病を治療していく。生きることを簡単に投げ出そうとする相手に対してはとても厳しい態度で、生きることを諦めずにがんばろうとする弱い立場である患者に対しては優しく接する、そんなヒューマンドラマが織り成される作品だった。

 今の世の中には到底ありえない設定ではあるが、ある意味、ブラック・ジャックは未来の医師の形と重なる部分がある。

 近年、ICT(Information and Communication Technology)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)が医療を変えていくと言われている。それは、まさに無免許のAIロボットやICTが治療にどのようにかかわるかがポイントになると考えられる。ここでは、実際にどのようなことが現在の医療で行われ始めているのかを紹介しながら、未来の医師像を考えていこう。

 これからの医療を考えるうえで欠かせないキーワードとして、まず、スマートフォンを用いた「遠隔医療」が挙げられる。

 かつて、IT(Information Technology)と呼ばれていた言葉は、最近では、CommunicationのC を入れてICTと呼ぶようになった。パソコンを使ってインターネットへアクセスする「IT=情報技術」において、コミュニケーションという要素が欠かせないものになってきたためだ。そして、そのICTを支える大きな柱となっているのが、スマートフォンの存在である。

次のページ