ICT医療を率先している私が言うこともおかしいが、これまでの医療のスタイルはある程度確立されたものとして、それをより効率良く、また、見逃しを減らし、私たちが今まで気づかなかったことを気づかせてくれるシステムとして、ICTやAIが私たち医師を助けていくだろう。

 日本の医療現場は、これらの技術を取り入れながら進化していく。医師免許を持たない「AI医師」と協力し合いながら一緒に仕事をすることが、これからの新しい医師の姿になるだろう。また、一人で病気と向き合う過去の医療から、チームのメンバーやAIによる診断結果など、様々な意見を聞きながら最終判断をすることが新しい医師の仕事となっていく。

 ブラック・ジャックのような医師とタッグを組み、さらに人間だからこそできる人と人とのふれあいを通じて人々を見守っていく医師。そんな未来の医師が一人でも多く生まれ、育っていくことに期待したい。そして、未来の医師の活躍によって多くの命が救える医療体制が作られることを、私たちは信じている。(寄稿)

高尾洋之/東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座 准教授。2001年東京慈恵会医科大学卒。同大学脳神経外科学臨床研修医などを経て、08年同大学附属病院に助教として勤務。12年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校留学ののち、14年に厚生労働省医政局に医系技官として従事。15年東京慈恵会医科大学附属病院脳神経外科学講座と兼任で現職に。近著に『鉄腕アトムのような医師』(日経BP社)

※『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』より