当時のCEO、スティーブ・ジョブズ氏の率いるアップル社が、初めてiPhoneを発表したのは2007年のことだ。それ以来、数多くの企業が、スマートフォンの開発・販売を行うようになった。いまやスマートフォンは爆発的に普及し、世界でも持っていない人のほうが少なくなるほどの時代に突入した。そんなスマートフォンの存在は、近年、医療界にも大きな恩恵をもたらし始めている。

 例えば、病院における医師の呼び出し方法は、内線電話に始まり、ポケットベルやPHSを経て、現在はスマートフォンへと変化しつつある。スマートフォンを使うことで、通話のみならず、テキストメッセージングや現場への一斉プッシュ通知など、様々なコミュニケーション手段が柔軟にとれるようになってきた。

 さらに、スマートフォンによっていつでもインターネットにつながる通信環境が実現したことで、膨大な情報をすぐに手に入れられるというメリットも生まれた。必要な知識や情報を得られるスピードも格段に速くなった。

■医師免許を持たないAI医師の出現

 新しい医療コミュニケーションの形も生まれている。

 日本では、CTやMRIなど人の体の状態を調べる検査機器は、すべて医療機器としての認可が必要だ。近年、様々な医療機器の出現を受けてその承認範囲が拡大し、ソフトウェア(アプリケーション)も医療機器の対象になった。そうした時代の変化を背景に生まれたのが、アルム社が開発した「Join」というアプリである。

 このJoinは、いわば「クローズドなLINE」といったところ。誰もが使えるわけではなく、管理者によってユーザーが医療従事者であることを確認する。

 医療情報は、不特定の人の目に触れることがあってはならない情報である。個人情報保護法はもちろん医師法においても守秘義務などがあり、患者に対して不利益をもたらすことがないように法律が整備されている。しかし現代において、医療関係者がいつでも医療情報(採血情報やCT、MRIのような医療画像など)を見られるシステムは、世の中の医療の質を画期的に向上させることにつながる。

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