林寛之医師「いつまでも腐ることなく復活する力『レジリエンス』も必要」
林寛之医師「いつまでも腐ることなく復活する力『レジリエンス』も必要」

 少子高齢化が進む日本で、今後、医療の現場はどう変わっていくのか。AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、NHK人気医療番組「総合診療医 ドクターG」でも知られる、福井大学医学部附属病院救急科・総合診療部教授の林寛之医師に、医学部を志望する学生に向けて「これから求められる医師像」を示してもらった。

※よりつづく

「強い、偉い、賢い」より大切な医者の資質は? ドクターG・林寛之医師が指摘

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病気を診ずして、病人を診よ」

 とは、高木兼寛の有名な言葉です。

 我々が相手をするのは生身の人間であることを忘れてはいけません。価値観も人それぞれ違うことを受け入れる度量も必要です。「医学的にどんなに正しくても、坂道の多い漁村に住む老婦人の足を安易に切断することはできないんだ。その人の生活や価値観を考えろ」と言ったのはDr.コトーですが、みなさんの世代はわからないかしら!?

 患者が「頭が痛い」と言えば、「つらそうですね」、「仕事もできない」と言えば「それは大変ですね」の声掛けくらい自然に出るようにならないといけません。「沈黙」だって、「どうぞ考えてからお話しください」という大事なコミュニケーションツールだし、落語や漫才だって「間」の重要性は言うまでもありません。

 共感力、協調力、コミュニケーション力、そしてユーモア力なくして人と付き合おうなど、おこがましいのです。大学に入学したその日からネタ帳をつくってください(笑)。

 大学生時代は、クラブ活動で仲間と助け合い、医学以外の本もたくさん読み、他の職種と付き合い、飲食店などサービス業でアルバイトして社会にもまれてみることをお勧めします。大学入試までは選抜試験で競争になりますが、入学後はすべて資格試験です。自分の質を上げることに専念すればいいだけであり、他人を蹴落とす必要はありません。仲間を大事にできる人、家族を大事にできる人は、患者さんも大事にできるようになります。

 医師免許を持っても、必ずしも人を相手にせずに研究者の道に進む人もいれば、メディアに出て芸能人になる人や、ピノコをつくってしまう天才外科医(あ、ブラック・ジャックは医師免許なかったですね)まで多岐な働き方ができます。


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