勝負弱い高梨沙羅は金メダルを取れない?(写真・Getty images)
勝負弱い高梨沙羅は金メダルを取れない?(写真・Getty images)

 ぶっちぎりの金メダル本命が一転、五輪シーズンに入って厳しい戦いを強いられているのが女子ジャンプの高梨沙羅だ。今季はワールドカップ(W杯)個人戦10試合を終えて優勝が一度もなく、2位が1度、3位が5度、4位が4度。6連勝を含む7勝を挙げ、W杯ランク首位につけるマーレン・ルンビ(ノルウェー)と、2勝でW杯ランク2位のカタリナ・アルトハウス(ドイツ)の2強に大きく差をつけられている。

 昨季最終戦を含めればW杯11戦連続で優勝から遠ざかっているが、昨季までW杯出場90試合で53勝と、6割近い驚異的な勝率を誇ってきたことを考えれば、異常事態と言ってもいいだろう。男女を通じてW杯の歴代単独最多となる通算54勝も、あと1勝と迫ってから足踏みが続く。

 高梨はW杯開幕前にフィンランドで合宿を行ったものの、天候に恵まれず十分な練習を積むことができなかった。そのため、助走から踏み切り、着地までの一連の動きが完成しないままシーズンに入り、それも不振の一因に挙げられている。

 ただ、理由はそれだけではないかもしれない。ノルウェーとドイツは、男子ジャンプとノルディック複合でも複数の金メダルが期待される強豪国。五輪2回目を迎え、強化に本腰を入れてきた女子ジャンプでも結果が出始めたということもありそうだ。

 4年前の高梨はW杯13戦で10勝と勝ちまくり(残り3戦は2位が2度、3位が1度)、金メダル確実と言われたが、メダルに届かない4位に沈んだ。まさかの結果に、大舞台に弱いというイメージがついてしまったが、高梨本人も「ピークを合わせたい時に力を発揮できないのが、自分の中で1番弱いところ」と認める。

 2年に1度開催されるノルディックスキー世界選手権も、4大会に出場して最高成績は銀メダル。金メダルだけを目指し、技術だけでなくメンタルも鍛えてきた4年間の集大成を大舞台で発揮できるか。

 1月19日に蔵王で行われたW杯個人第7戦で、高梨は4試合ぶりに表彰台を逃し4位に終わった。この時、優勝したルンビに2本のジャンプ合計で44.9点、飛距離にして15メートル以上の大差をつけられていたが、五輪前最後のW杯となった1月28日の個人第10戦(スロベニア)では、順位こそ4位だったものの優勝したダニエラ・イラシュコとの差はわずか5.8点だった。少しずつ差が縮まってきているのは好材料だ。

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高梨&伊藤でWメダルの可能性も…