「米倉さんのさばき方は、医師から見ても医師らしく見える」とドラマ監修医・新村核医師(イラスト/ほししんいち)
「米倉さんのさばき方は、医師から見ても医師らしく見える」とドラマ監修医・新村核医師(イラスト/ほししんいち)

視聴率低迷”が叫ばれるテレビドラマのなかで、ひときわ奮闘しているのが、ご存じ、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系列)だ。2017年末で第5シーズンを終えたが、平均視聴率はなんと20 % 超え。そんな医療ドラマを陰で支える監修医師がいる。発売中のAERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、フィクションでありながらリアルを突き詰める、ドラマの監修医「ミスターX」の秘められた熱い思いに迫った。

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 手の施しようのなくなった肝臓がんの患者を前に、立ち尽くす。

「いたしません」

 テレビドラマ「ドクターX」で外科医・大門未知子が手術続行を諦めた瞬間だ。ところが数週間後、その患者のおなかを再び開き、難手術を見事成功させる。患者と視聴者は大門に一度裏切られ、そしてまた救われる。

「私、失敗しないので」

 その名せりふで知られる大門未知子は、やはり「失敗しない」のだった。

 テレビドラマならではの、まるで奇跡のような展開に思えるかもしれない。だが、実際にある術式で演じられている。

 たとえば、第5シーズン第4話で登場した冒頭の手術は、肝臓がんの摘出手術で実際に行われる「アルプス(ALPPS)」という術式。手術を2度に分けることで進行した肝臓がんの腫瘍を摘出できるのだ。

■劇中の手術はすべて、実際にある症例から

 こうしたリアルな手術シーンに定評がある「ドクターX」。女優、米倉涼子さん演じるフリーランス外科医の大門未知子は、一匹狼よろしく群れや権力を嫌う。強気な発言どおりに手術の腕一本で次々と患者を救う痛快な振る舞いが、すこぶる人気だ。

 手術後に2千万円という法外な報酬を請求するなど「ありえない」設定もある。が、「手術はすべて実際にある症例しか使わない」と言い切るのは、同ドラマの制作プロデューサーだ。

「まず症例があって、そこからストーリーを発想していきます。医師から見たらそんな展開はおかしいとか、現実ではありえないことが起きたら、軌道修正しながらとことんリアルにこだわる。それが面白さにつながると信じています」

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