そんなドラマの肝となる手術シーンを支えているのが、脳外科を専門とする新村核医師だ。新村医師はシーズン1の立ち上げ当初から外科監修を担当。実際の撮影現場にも立ち会い、俳優に指導をおこなってきた。

 新村医師は、現在四つの病院に勤務し、脳外科医として日々手術を執刀している。臨床医として働く傍ら、「コード・ブルー」(フジテレビ系列)、「Dr.倫太郎」(日本テレビ系列)、「検事 朝日奈耀子」(テレビ朝日)など、数々のドラマを監修している。まさに人気医療ドラマにおける「ミスターX」だ。

■医師が見ても医師らしい手さばき

 殊に「ドクターX」への思い入れは、強い。

「大門未知子は、多分に脚色されたとがったキャラクターじゃないですか。現実にはいないからこそ憧れるし、スカッとしますよね。それに対して、医療的な部分は誰からも後ろ指さされないようなバックグラウンドをつくりたい。ただ単に上に盾突くスタンドプレーヤーではなく、外科医として医師として絶対におかしくないようにしたいと思っています」

「ドクターX」では普通の台本とは別に、医療に特化した「医療台本」が毎回用意されている。その中身は、さながら医学専門誌のように臓器の構造から、病状、詳細な手術の手順、切開するラインなどが描かれている。

 ある台本の表紙には「7稿」の文字が。つまり、7回も新村医師や制作陣が打ち合わせと修正を重ねたということだ。

「あくまでドラマですので、せめぎ合いはあります。『1%でもありえる』ものであれば、片目をつぶるようなこともありますが、医療としては一本筋が通るようにしています」(新村医師)

 シーズン1が始まったのは2012年。5年を経過した米倉さんの触診や手術の基本的な手さばきは、「医師から見ても医師らしく見える」と新村医師は絶賛する。

「ドラマでは血管が裂け、大出血を起こすシーンがお約束のように出てきます。臓器の深い部分で血管を縫い合わせるときの針や糸のさばき方は我々でも習得するのに時間がかかる。最初は縫うふりだけでしたが、今では実際に血管に見立てたゴムに針を通しているんですよ」

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あの決め台詞は医師としても…