同28日、鎌ケ谷球場でのフリー打撃で、38スイング中11本が柵越えし、うち3本が場外弾と復調をアピール。

 中でも5スイング目に放った場外弾は、大谷自身も「やべえ!」と言うほど大きな放物線を描くと、右中間の防球ネットを越えて約130メートルも飛び、球場外周道路沿いに停車していたファンの白いワンボックスカーの屋根を直撃した。

 打球を目で追っていた大谷は、ボールが車を直撃したのを確認すると、衝撃で屋根の部分がへこんでしまった車に向かってヘルメットを脱いで申し訳なさそうに頭を下げた。

 もっとも、持ち主の会社員男性は、愛車に“球界の至宝”の痕跡が残ったことを「ラッキー」と喜んだのだが。

 6月11日にも、フリー打撃中の柵越えの一打が同球場の大型ビジョンを直撃。点灯しない箇所があるままイースタンの試合(DeNA戦)が行われるなど、規格外の大物ぶりを見せつけた。

 その後、同27日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で80日ぶりに1軍復帰をはたし、3勝2敗、防御率3.20、打率3割3分2厘、8本塁打の成績を残した。オフにポスティングでエンゼルス移籍が決定。2018年は、いよいよメジャーリーガー・大谷の雄姿が見られる。

 お役所というのは、国内外問わず融通が利かないという事実を改めて立証したのが、中日・ビシエドの米市民権取得騒動だった。

 キューバ出身のビシエドは、米国の市民権取得のため、6月16日に渡米。同23日のリーグ戦再開までには戻って来る予定だった。

 ところが、手続きがなかなか完了せず、再合流の見通しが立たない。ついに同24日、登録を抹消された。

 西山和夫球団代表は「ビシエドは毎日のように入国管理局に出向いて、『どうかしてくれ』という状態。必要な書類を出して審査を待っているが、次の指示が来ないで、ストップしている状態」と困惑しながら説明した。

「何でまたシーズン中に?」と疑問を感じたドラファンも多かっただろうが、市民権取得の日程は米政府が通達してくるものなので、こればかりはどうにもならないのだ。

 7月12日、メドが立たないため、自主判断で再来日したビシエドは「皆さんに申し訳なく思っている。抜けた期間を取り戻せるような仕事をしたい」と後半戦開幕となる同17日からの巨人戦(ナゴヤドーム)から暫定復帰し、8月の10試合で打率3割5分9厘をマークするなど、好調をキープした。

 ところが、8月13日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)、6回の第3打席で近藤一樹から右上腕に死球を受け、7回の守備から交代。病院で検査の結果、右腕尺骨骨折で全治6~8週間と診断され、不運にもシーズンの残り試合を棒に振ってしまった。

 皮肉なことに、市民権取得に専念できることになったわけだが、世の中、流れが悪いときは、何をやってもうまくいかないという見本のような結末となった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら