たとえば小脳出血の場合、小脳は容積が小さく脳幹部に近いので、出血により意識障害や脳ヘルニアを起こす可能性があるため、手術をおこないます。逆に脳幹出血の場合は、脳幹に神経が集中しているため手術はおこないません。

 手術方法は頭蓋骨を開け、専用の顕微鏡で観察しながら血腫を取り除く「開頭血腫除去術」や、CT画像で血腫の位置を特定し、頭蓋骨に小さな穴をあけ、針や内視鏡を使って血腫を取り除く「定位的血腫吸引術」があります。

 ただし、こうした手術は救命のためにおこなうものであり、脳出血によって障害された脳の機能を元に戻すものではありません。

 また視床出血や小脳出血では、出血した血液が脳室に流れ込み、血腫のために脳脊髄(せきずい)液がうまく流れなくなることがあります。これが急性水頭症で、頭蓋内圧が上昇し脳ヘルニアを起こす危険性があります。

 この場合は脳にドレーン(チューブ)を入れ、設定圧を調整して脳脊髄液を一時的に外部に排出する「脳室ドレナージ術」をおこないます。普通は1週間ほどで脳脊髄液の流れが正常になり、ドレーンを抜くことができます。

「脳室ドレナージ術は命にかかわるような重大な手術ではありませんが、脳脊髄液の正常な流れを取り戻す非常に有効な方法です」(同)

(取材・文/須藤智香)