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鉄道だけが戦乱の時代を引きずるカンボジアの現在 <下川裕治のどこへと訊かれて>

連載「どこへと訊かれて」

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もう少し瀟洒な駅舎なら、後ろの海に映えるのだが

もう少し瀟洒な駅舎なら、後ろの海に映えるのだが

もう少し瀟洒な駅舎なら、後ろの海に映えるのだが

もう少し瀟洒な駅舎なら、後ろの海に映えるのだが

 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第40回はカンボジアのシアヌークビル駅から。

【シアヌークビル駅の写真はこちら】

*  *  *
 坂道をしばらく登った。道に沿って中国人向けの商店や食堂が点在している。カンボジアのシアヌークビルは坂の街だ。

「このへんで見えるだろうか」

 振り返ると、強い日射しに輝く海原が広がっていた。ふーッと息をつく。こんな海を見たのは久しぶりのような気がした。

 ということは……と視線をおろす。そこにかまぼこ型の屋根が横に連なった灰色の建物が見えた。こうして眺めると、その建物だけがあの時代を引きずっているように映る。

 1時間ほど前、この建物のなかにいた。殺風景な構内。切符売り場は見あたらなかった。壁際に机がひとつ置かれ、作業服を着た青年が座っていた。

「あの……、プノンペンまでの切符を買いたいんですけど」
「ここです」
「……?」
「7ドル」

 その机が切符売り場だった。


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