医療分野のテクノロジーの進歩は目覚ましく、疾患の早期発見・治療、リハビリに大きく貢献することが期待されています。週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病いい病院」では、診断・治療を最適化する人工知能(AI)が開く「近未来の医療」を取材しました。

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 現在、人工知能(AI)は第3次ブームを迎えており、医療分野にも大きな革新をもたらしつつあります。

 東京大学医科学研究所は2016年8月、AIを備えるコンピューターであるIBMの「ワトソン」が、専門家でも診断が難しい特殊な白血病をわずか10分で突き止め、60代の女性患者の命が救われたと発表しました。この成果は、ワトソンが2千万件に上るがん研究の論文や薬の特許情報などを参照し、患者の遺伝情報と照らし合わせた結果、当初診断された急性骨髄性白血病とは異なる特殊な白血病であると判断し、抗がん剤の変更を提案したことでもたらされたものです。

 国立がん研究センターとNECも17年7月、AIを用いて大腸がんやがんに移行しやすいポリープを内視鏡検査時にリアルタイムで発見するシステムを開発したと発表。AI技術や高速処理技術を駆使し、内視鏡の画像を瞬時に解析できるようにしています。

 自治医科大学病院は、双方向対話型AI「ホワイト・ジャック」の試験運用を16年秋から開始しました。患者がタッチパネル式のタブレット端末にIDカードをかざし、症状や発症時期、病歴などを入力すると、同大学に蓄積されたビッグデータと照合して受診すべき診療科に案内します。医師が電子カルテに身体所見、問診などの情報を追加入力すると、ホワイト・ジャックが再解析をおこなって可能性の高い疾患を絞り込み、推奨される薬剤や治療法も表示されるようになっています。

 そのほか、愛知医科大学は、患者のカルテ情報をもとに適切な診断を支援するAIをIT企業などと共同開発。弘前大学は東北電力と共同で、方言を標準語に翻訳する研究を進めています。

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