一方、AIが推論や学習をおこなうもとになる膨大なデータ(ビッグデータ)の整備も進んでいます。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、医薬品などの安全対策を進めるため11年に医療情報データベース事業(MID‒NETプロジェクト)を開始。現在、10拠点23病院400万人規模のデータの品質管理調査を実施中で、18年度以降の本格運用を目指しています。

 現在、AIを備えたコンピューターシステムは、医師が読むと1カ月半かかる膨大な文献を20分足らずで読むことができます。また、画像所見を精密に解析する画像認識や患者の言葉のニュアンスをくみとって真意を探る音声認識などの技術も進歩しています。

 これらはいずれも研究・開発段階のもので、まだ実際の臨床現場では用いられていません。しかし近い将来、診察室の電子カルテがこうしたAI技術を備え、データを医療機関ごとに集約、国家的なビッグデータとつながることで、希少で重篤な疾患の早期発見、最適な治療法の選択に役立つことが期待されます。

(取材・文/小池雄介)