つまり、日本の有権者は保守の政権しか望んでいないけど、今は「安倍の自民党」という「巨大化した保守」しか選択肢がないんですよ。でも、これが「自民党A」と「自民党B」に分かれて、その間で政権がコロコロ変われば、「安倍はさすがにイヤだなぁ」と思った時に選択肢があるわけでしょ? 「そういうのがあれば便利だよね」って思っている人は意外と多くて、それが「保守vs.保守」の二大政党制を望んでいる人たちの気持ちなんだろうなぁと。

 そもそも「保守政党vs.革新政党」による二大政党制というのは、「自民党vs.社会党」という「55年体制」時代の幻影であってさ、かつての民主党の最大の失敗は、彼らが「政権を取る」なんていう幻を追ったことなんです。だから、今回「躍進した」と言われる枝野の立憲民主党も変に勘違いして「将来の政権を担う」なんてコトは考えずに、昔の社会党みたいな「意地悪な批評家」に徹したほうがいいと思いますね。

──ただ、ある意味「自民党B」を目指した希望の党もあっという間に失速して、結果的には「巨大な保守」一強の政治基盤が、それも「盤石」な形で残ってしまったわけですが。

橋本:でもさ、本当に「盤石」だと思う? 落ち着いて考えると、それって日本の政治という実に「軟弱」な地盤に超高層ビルが立っているみたいな話でしょ? みんな、今回の選挙結果を見て「自民党の政治基盤は盤石になった」とか言っているけど、私は「ホントにそうかな?」と思うんですね。むしろ、全国を遊説している小泉進次郎の人気なんかを見ていると、今や「安定した不人気」を誇る安倍晋三の下、巨大化した自民党政権が、この先、安定したままでいられると考えるほうが不思議なくらいでさぁ。

 拡大と繁栄を誇ったローマ帝国が最大領土を実現した頃から、分裂と衰退が始まるように、巨大化した自民党政権にも、この先、あちこちからヒビが入らないという保証はない。大きく広げすぎたお好み焼きを、崩さずに引っくり返せるのか。それはある意味「大きなもの」が抱える一種の宿命でもあるわけでね。例えば今回、小池百合子は「ジジイ自民党」に対抗する「オバサンの自民党」という形で「自民党B」を作ろうとして失敗したけれど、将来小泉進次郎が「若者の自民党」を立ち上げて、「ジジイの自民党」に対峙するなんていう構図は、十分にあり得るわけでしょ?

次のページ