「自分たちの世代は、これだけ長く海外でサッカーをやってきて、サッカーだけでなく、サッカー以外の人間性の部分でも多くを学んできた。それを子どもたちに伝えたいという思いがあったんです」

 月に2、3回は、トレーニングの前に、動画で長谷部がテーマを決めて話をし、それに対して子どもたちがノートに意見や質問を書く。そこにまた長谷部がコメントするというおそろしく手間のかかる作業。関わるすべてをおざなりにできない質(たち)なのだ。そして、こうした活動で学んだことひとつひとつがまた、長谷部誠というリーダーの血肉となっているのである。

 長谷部は、将来、ドイツで監督に就くことを視野においている。

「言葉に問題はあるにせよ、海外で監督をしてみたいという思いはあります。まずはドイツで免許を取りたい。難しいものにチャレンジすることは、自分のなかの楽しみでもあるんです」

 しかし、長谷部は最後にこうも言うのだった。

「監督に本当に向いているかと言われたら、自分でも正直クエッションなんです。トップより中間管理職のほうが自分は生かされる気もするし。これから考えが変わるかもしれないし。でも、海外の人からよく言われるんです。『なんで日本代表は海外の監督なんだ』って。ただ、これからは、海外のチームやワールドカップを経験された方々がJリーグとかの監督になってきているので、日本人が日本代表の監督をやることは多くなるんじゃないかな、と思っています」

 ブンデスリーガ237試合、日本代表105試合。これだけのキャリアを誇り、キャプテンとして常に未来を見つめ、考え抜いてきた長谷部誠。日本代表監督にこれほどふさわしい男はいないと思うのだが。(文・一志治夫)

※アエラスタイルマガジン 36号より抜粋