それでも、これらの悪い状況を全て覆すのが、ホームゲームでの驚異的な勝率だ。交流戦を含めた今季の成績は45勝17敗1分の勝率.726、リーグ戦に限ると39勝14敗1分の勝率.736と、さらに跳ね上がる。前述した3度の同一カード3連敗は全て敵地でのもので、中日相手にはマツダスタジアムで2度の同一カード3連勝を含む10勝2敗と一方的な成績で、対戦成績が互角に近い2チームも、地元では阪神を8勝2敗1分と圧倒し、対戦成績がマイナスのDeNAでもマツダスタジアムで4勝4敗と五分の成績を残している。

 9月の天王山3連戦で2試合連続サヨナラ負けを喫した試合後、阪神の金本監督は「ここは、まあ、なんと言うか、そういう風が向こうに吹いている」とマツダスタジアム独特の雰囲気にお手上げ状態だった。同カードで広島の3連勝が決まった時、緒方監督が「大きな声援の後押しがあった。選手も声援で乗っていけた」とコメントしたように、今季は地元で勝利した試合後の監督会見では、かなりの高確率でスタンドを超満員に埋めるファンへの感謝の言葉が出た。

 現在の広島が他球団を圧倒するだけの戦力を有していることも間違いない。田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の同級生トリオが不動の1、2、3番を形成し、新井貴浩、エルドレッドのベテランが休養を交えながら、クリーンアップでポイントゲッターとして機能する。さらに今季10年目の大ブレイクを果たした安部や2年目の西川龍馬、さらには終盤の代走要員で存在感を見せはじめている野間峻祥など、脇を固める選手もレベルアップが著しい。投手も野村祐輔、岡田明丈、大瀬良大地らのドラフト1位入団の先発陣に、ブルペンも昨季からの今村猛、ジャクソン、中崎翔太に加えて一岡竜司、中田廉、さらに先発、リリーフ兼用の九里亜蓮など、多彩な顔ぶれが揃っている。

 開幕直後には昨季沢村賞のジョンソンが離脱し、シーズン終盤には不動の4番で90打点をマークしていた鈴木誠也が故障で今季絶望となったが、チームの勢いは衰えることがなかった。投手では薮田和樹や中村祐太、野手では松山竜平やバティスタなどが活躍するなど、誰かが抜けても、他の誰かが出てくる選手層の厚さは、他球団を寄せ付けないものがある。

 選手はもちろん、首脳陣やファン、さらにはホームスタジアムなど、全てがいい方向に噛み合い、チームは37年ぶりとなるリーグ連覇を目前としている。その先に待つ、昨年成し遂げられなかった日本シリーズ制覇となれば、カープの新たな黄金時代の到来は近いかもしれない。