ブルゾンちえみ (c)朝日新聞社
ブルゾンちえみ (c)朝日新聞社

「24時間テレビ40 愛は地球を救う」(日本テレビ系/8月26~27日放送)で“サプライズ”でチャリティーマラソンのランナーを務めた、女性芸人のブルゾンちえみ。当日に突然指名されたにもかかわらず、彼女は丸一日かけて90キロのコースを見事に完走した。今回の「24時間テレビ」は全平均で18.6%という歴代2位の視聴率を記録。テレビの影響力が年々下がっている中で、民放視聴率トップを独走する日本テレビが底力を見せつけた形となった。

 ウェブの世界では「24時間テレビ」に対する風当たりが強い。感動を与えるための道具として障害者を利用しているかのような演出に対する批判的な意見をしばしば目にする。ところが、オンエア中のSNSなどを眺めていても、ブルゾンちえみに対する批判の声はほとんどなかった。それどころか、「『24時間テレビ』は好きじゃないけどブルゾンは応援している」などと、彼女のことを熱烈に支持する声が圧倒的に多かったのだ。本格的にテレビに出始めてまだ1年も経っていない彼女が、なぜこんなにも多くの視聴者に愛されているのだろうか。

 もちろん、ブルゾンがブレークしたきっかけは、テレビでキャリアウーマンのネタを披露したことだ。ピン芸人なのに3人組という異色の編成、キャッチーな音楽、「35億」という決めフレーズなどが話題になった。しかし、単に最初に演じたネタやキャラが評判になっただけならば、彼女がここまで人気になることはなかったはずだ。これまでにもたくさん存在したいわゆる「一発屋芸人」のように、あっという間に消費され尽くしてしまう可能性もあっただろう。彼女が現時点でそうなっていないのには別の理由がある。

 ブルゾンの好感度が高い理由は、その誠実で実直な人柄にある。「24時間テレビ」でランナーとして走る彼女に対する意見の中にも、その生真面目さを評価する声が多いのが目立つ。

 ブルゾンは、芸歴2年目でほとんど下積みもない状態でテレビの世界に足を踏み入れた。若くしてブレークしたタレントは、調子に乗って傲慢になったり、あるいは過度に卑屈で臆病になったりしがちなものだ。調子に乗って偉そうにする人が好かれないのは当然だが、やたらとペコペコしているのもそれはそれで違和感を与えてしまう。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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