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医者にもリーダー教育が必要? 「専門バカ」はやがて伸び悩むという現実

連載「メディカルインサイト」

上昌広dot.#朝日新聞出版の本
上昌広(かみ・まさひろ) 1968年生まれ。東京大学医学部卒、医学博士。東大医科学研究所などを経て医療ガバナンス研究所理事長(撮影/写真部・小原雄輝)

上昌広(かみ・まさひろ) 1968年生まれ。東京大学医学部卒、医学博士。東大医科学研究所などを経て医療ガバナンス研究所理事長(撮影/写真部・小原雄輝)

 人は地域社会の影響を受ける。ところが、地元で暮らす限り、このことは自覚しづらい。一方、小坂君や妹尾さんのように「異郷」で学べば違和感を抱かざるを得ない。この違和感を文章にすることで、自分とは何かを考える。自分が分かれば、相手を相対的に理解できる。

 理解したら行動だ。行動力をつけるには、実践を積むしかない。その際、有効なのは優秀な大人から技を盗むことだ。

 吉田さんは、福島県浜通りで活動している坪倉正治医師の「かばん持ち」をしながら、仕事ぶりをつぶさに見ている。

 相馬市の立谷秀清市長や、いわき市で医療・介護施設を経営するときわ会の幹部との飲み会にも参加した。そしてリーダーの思考プロセスを垣間見た。

 見ているだけではだめだ。自ら動かねばならない。吉田さんは「◯◯をさせてください」と具体的に希望を伝えた。結果、いわき市のかなや幼稚園や相馬市の井戸端長屋、骨太公園(相馬市が造った高齢者向けの公園)などを訪問し、園児や高齢者と交流することができた。彼女は、坪倉医師の指導のもと、この経験を学術誌にレターとして投稿した。

「自分から動くと、変わるんですね」という。動けば軋轢が生じる。彼女は悩んだが、自信もつけた。「次はハンガリーの友人を連れてくる」そうだ。

 私は、スケールの大きな医師になるには、医学の専門知識以上に、幅広い教養を身につけ、人間力を涵養することが大切と考えている。

 このような考えに至ったのは、多くの失敗を見てきたからだ。20代に「ネイチャー」などの主要誌に論文を発表した医師の多くが、30代半ばを超えると伸び悩む。かつて、光り輝いていたのに、権威主義のつまらない中年になってしまう。

「立場上言えない」と言い訳したり、「学会としては」と前置きしたりして、ポジショントークを繰り返す。こんなことをしているうちに、まともな思考能力を失ってしまう。

 なぜ、こうなるのだろうか。


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