サイドを封鎖したのに、今度は中央から迫ってくる。試合中に井手口陽介や酒井宏といった怪我人が続出し、疲労困憊だった日本代表にとって、これほど厄介な状況はない。後半のテクニシャン投入で流れを変える。本来ならば、同じことを日本がやりたかったはず。たとえば先日のシリア戦で、後半に投入した乾貴士が、疲れたシリアのDFを相手に思いっきり躍動したように。

 ところが、日本は怪我人のために、その交代カードを切れず。逆にイラクが同じねらいで交代カードを切った。イラクのメッシは試合を動かしたが、乾はベンチに座ったまま。そうなってしまったのは、不運だが……。

 後半28分の失点シーンは、相手の壁パスに突っ込みすぎた遠藤航も、その後にかわされた昌子源も、そして即座に割り切ってクリアができなかった吉田麻也も、気持ちが受け身に回ったシーンに見えた。特に吉田は、あの場面でGKにボールを任せようとする選択自体に、追い込まれた感がある。チームの身体的なパフォーマンス低下を肌で感じ、苦しんでいたのではないか。

 イラクはこの環境下で戦い方がよく整理されていた。それに比べると、日本は突撃が目立つ。幅を使ったイラクの攻めとは違い、中央へ中央へと混雑させてしまい、サイドチェンジしながら休むこともできなかった。

 それにしても、いったい何のためのシリア戦だったのか。7日に東京スタジアムで夜19時半にキックオフしたシリア戦は、実に涼しく、快適な気温だった。そこから37度への急上昇。これでは、戦い方がまったく参考にならない。むしろ現地に入ってから、「暑い!プランを変えないと」と選手を惑わせてしまう。昌子のような選手が実戦慣れするためには必要な試合だが、それを日本で行ったことに関しては、マイナス面すら感じる。(文・清水英斗)