一方で、ブラジルW杯で日本を率いたアルベルト・ザッケローニ元監督は2011年に優勝したアジアカップから三次予選にかけてチームの主力を固め、そこからは日本人に馴染みやすいという[4‐2‐3‐1]をベースに、ほとんどメンバーを固定して、チームの完成度を高めていった。“ザックジャパン”における攻撃スタイルについて右SBのレギュラーを担った内田篤人は「左で組み立てて、右の岡ちゃんが仕留めるパターン」と表現した。

 つまり中盤のポゼッションから左サイドで香川、遠藤保仁、長友佑都の3人がチャンスを作り、右ウィングの岡崎慎司がタイミングよくゴール前に絡んでいく形だが、その基本スタイルはかなり早い段階で骨格が組み上がり、最終予選の頃には下手にいじりにくいレベルまで熟成されていた。

 もちろん、そうしたスタイルを完成させるには周りを固めるピースが必要となる。遠藤の相棒として中盤のオーガナイズを引き受ける長谷部誠、抜群のキープ力で相手のプレッシャーを吸収し、香川や遠藤のプレースペースを提供する本田、左から果敢に攻め上がる長友と左右のバランスを取る“サイドのハンドル役”の内田と言った具合だ。

 例外的に1トップは残り1年というところで洗練されたポストプレーを得意とする前田遼一から、裏に飛び出してゴールを狙う柿谷曜一朗に代わった。また、いくつかのオプションや主力選手のコンディション低下にともなう“代役”の発掘は行っており、最終的には遠藤も経験豊富なジョーカー的な役回りになるが、主力の大半が“替えの利かない選手”として、イタリア人監督が率いた4年間のほとんどを主力であり続けた。世に言われる“メンバー固定”だ。

 ただ、ザッケローニは一方で、彼の理想的なシステムと言われる[3‐4‐3]のテストを何度も行い、そのシステムに合うメンバーの選考も模索してきた。結局それは[4‐2‐3‐1]で戦い慣れたチームの中に浸透することなく、本大会では一度も採用されなかったが、“メンバー固定”と揶揄されたザッケローニの実験的な試みがそこにあったことは間違いない。

 ハリルホジッチ監督に話を戻そう。彼のアルジェリア代表時代を振り返ると、W杯から1年半前のアフリカネーションズカップ2013から、アフリカ予選の最終戦を比較すると、23人中の9人が変更されている。そこから半年後の6月2日に発表されたブラジルW杯の最終メンバーは5人が新しく加わった。その中の1人が後にレスターで岡崎とともにプレミアリーグ制覇を勝ち取るリヤド・マフレズだ。

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