久坂部羊「介護短歌 それは癒やし」 (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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久坂部羊「介護短歌 それは癒やし」

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久坂部羊dot.#朝日新聞出版の本#認知症

左から毒蝮さん、小谷さん、久坂部さん

左から毒蝮さん、小谷さん、久坂部さん

老乱

久坂部羊著

978-4022514318

amazonamazon.co.jp

『老乱』という小説で認知症の介護を描いた縁で、NHKの「ハートネットTV・介護百人一首」に出演することになった。全国から介護に関する短歌を百首集め、四季に分けて紹介する番組である。百首選ぶのに、毎年、一万二、三千首の応募があるというから、今の日本、いかに介護に関わる人が多いかがわかる。

 番組は毒蝮三太夫氏と、小谷あゆみアナウンサーの進行で行われ、私は感想を述べる役だった。

 毒蝮三太夫氏は御歳81。カクシャクという言葉がお呼びでないほど、若々しくエネルギッシュだった。テレビでウルトラマンをオンタイムで見ていた私には、「アラシ隊員」のイメージそのもの。思わず懐かしさが込み上げた。

 収録は、まず詠み人を訪ねるビデオを見ることからはじまった。

■震災にわが母抱えくれし夫(つま)今歩けぬをわれが支えん

 102歳の母親を介護する女性の歌だ。東日本大震災のとき、恐怖で動けなくなった女性の代わりに、夫が母を助け出してくれた。その夫が今は脊柱管狭窄症で歩行困難になり、妻の自分が介護している。

 人間というのはイザというときに本心が出るから、夫は常日頃から義母を大事にしていたのだろう。義理の親を大事にするというのは、実にワリのいい投資である。すべて自分に返ってくるのだから。もちろん、打算で大事にしても意味はない。いくら大事にするふりをしていても、震災のときにほったらかして逃げたのでは、すぐメッキがはがれてしまう。

■独居になり貼り紙多し電話口息子居ないと孫の太い字

 オレオレ詐欺対策に、電話のそばに貼ったメモを詠んだ歌だ。メモを書いたのは、独居の女性を案じて、となりに住んでくれた孫娘。

 ビデオでは、女性が曾孫の宿題を見てやっている場面もあった。なんとも微笑ましい光景だ。女性は高齢になる前から、孫や曾孫に好かれていたのだろう。好ましい介護は、介護がはじまるずいぶん前から下ごしらえがはじまっているとわかる映像だった。


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