「(1)がんに負けないで必ず勝つ!」がもっとも長生きだったと思われる方が多いでしょう。でも実際には、(1)と「(2)がんを真摯に受け止めて、粛々と治療に励む」「(4)自分ががんであることを忘れたかのように過ごす」のグループでは、その後の経過に明確な差は認められませんでした。

 そして、「(3)あきらめて絶望的になった」グループは、進行が極端に早く、かなり早期に全員が亡くなってしまったのです。

 この結果をどう読み解くか。それは、あきらめて絶望的にさえならなければ、それぞれが自分らしく、がんと人生と向き合えばいい、ということです。

 この結果を受けて、その後の医学界の常識までもがガラリと変わりました。昔は「頑張ってがんと闘いましょう」と、患者さんにプレッシャーをかけることも多かったのですが、研究発表以降、「その人なりのやり方でがんと向き合えばいい」「医師や医療スタッフは、患者さんの気持ちを尊重しつつ、しっかりサポートするのが大切である」という考え方が主流になってきたのです。

 この他にも、人のために「祈る」ことによって、心を癒やす作用や、ストレスを打ち消して免疫力を高める効果がある「オキシトシン」の分泌が高まることなど、さまざまなことがわかってきています。

 がんの治療でもう一つ大切なのは、「がんは慢性疾患である」と理解することです。
 
 病気は、「完治する病気」「完治しない病気」に大別できますが、風邪や虫垂炎などは前者で、がんは後者に分類されます。しかし、完治しないという点では、高血圧や糖尿病、関節リウマチなども同じです。

 良い状態をキープしながら、気長に一生つき合い続ける病気。そう考えると、がんが慢性疾患であるのがわかるでしょう。
 
 慢性疾患では、それまでの生活を見直し改めることが求められます。がん患者さんが、思い切って仕事のやり方や、食生活を根本的に変え、ストレスをためない生活を心がけるようになると、がんに変化を与えるだけでなく、その他の生活習慣病も防いで健康になっていく例を、私は間近でたくさん見てきました。

 2人に1人が、がんになる時代だからこそ、慌てずに対処するための「心の整え方」を、ぜひ多くの方に知ってほしいと思います。(構成:dot編集部)