懐かしのあのおもちゃが意外な分野で復活!? 会社を支える奇抜なアイデアと心意気 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

懐かしのあのおもちゃが意外な分野で復活!? 会社を支える奇抜なアイデアと心意気

このエントリーをはてなブックマークに追加
南文枝dot.
子どもや大人にも大人気という「ひげメガネ」

子どもや大人にも大人気という「ひげメガネ」

非売品の「初日の出」。吹くとけっこうつらい

非売品の「初日の出」。吹くとけっこうつらい

バラエティーに富んだ吹き戻しの数々。手前左はグー、チョキ、パーが出せる「じゃんけんピーヒャラ」

バラエティーに富んだ吹き戻しの数々。手前左はグー、チョキ、パーが出せる「じゃんけんピーヒャラ」

鏡を見ながら、非売品の「タマネギ」に挑戦。成功なるか?

鏡を見ながら、非売品の「タマネギ」に挑戦。成功なるか?

熊本地震の被災者へ、メッセージ入りの吹き戻しを送る取り組みを続けている

熊本地震の被災者へ、メッセージ入りの吹き戻しを送る取り組みを続けている

 筒を口にくわえてピューッと息を吹き込むと紙がするする伸び、息を止めるとくるくると戻るおもちゃ「吹き戻し」。筒の先に袋状の巻き紙がついており、中に通した針金が形状を覚えているため、吹いてもきちんと巻き戻る仕組みだ。

 かつては日本中で生産され、海外に輸出されていたこともあったが、現在は、兵庫県淡路市にあるメーカー、株式会社吹き戻しの里が国内生産の7割以上を担い、他には大阪の会社の1社が残るのみだ。

 そんな吹き戻しが近年、医療や介護、美容の分野で注目を集めている。吹き戻しの里では約5年前、広島県立広島大や介護・健康用品メーカー、株式会社ルピナス(本社・広島県三次市)などと協力して、ぜんそく回復のためのトレーニングやリハビリ、お年寄りの誤嚥(ごえん)防止を目的とした口、のど周辺の筋肉トレーニングに役立つ吹き戻し「長息生活」を開発した。

 先端の巻き紙に通す針金の強度を調節して、負荷のレベル別に3種類の吹き戻しを製作。吹き口にシリコンキャップを付けて息もれを防ぎ、お年寄りなど筋肉が衰えた人でも使いやすいようにした。既に導入している病院もあり、高く評価されているという。吹き戻しの里・社長秘書の村田晋二さんは「使い方を説明しなくても理解してもらえるし、遊び感覚で楽しくトレーニングしてくれている」と話す。

 他にも、腹式呼吸の訓練として、吹奏楽部などで重宝されるほか、近年は、吹き戻しを使ったダイエット「ピロピロビクス」なるものも登場した。腕を水平に上げて、吹き戻しを吹くのだが、ほうれい線や二重あご、二の腕、下腹のエクササイズが一度にできるという。

 村田さんは「年齢や性別、国籍を超えて笑顔になれるのが吹き戻しの魅力」と力説する。工場見学や製作体験ができる吹き戻しの里には家族連れやカップル、ツーリングの若者など幅広い世代の人々が訪れ、皆にこにこと吹き戻しを吹く。東日本大震災や熊本地震の被災地にもボランティア通じて送ったところ、喜ばれた。2016年10月現在も、里で製作体験をした人に、作った6本のうち1本にメッセージを書いて寄付してもらい、熊本地震の被災地に送る取り組みを続けている。

 村田さんは「昔ながらのおもちゃではあるが、誰もが知っているという強みを生かしていろいろな分野に進出したい」と意気込む。

 吹き戻しの里は、1938年、紙製品を扱う「八幡光雲堂紙店」として大阪で創業。1950年代から、吹き戻しの生産に力を入れ出した。60年代初めに専用の機械を開発して特許を取得、70年代にかけてパーティーグッズとして、アメリカやヨーロッパなど世界中に輸出していたという。71年に淡路島に工場を建設したが、急激な円高や安価な中国製品の台頭などで輸出量は次第に減少。そのころに現社長である藤村良男さんが入社し、奇抜なアイデアの吹き戻しの開発に乗り出した。98年には、本社も淡路島に移した。

 鼻付きの黒縁メガネを装着し、口元の筒をピューッと吹くと、瞬く間にひげが伸びる「ひげメガネ」。息を吹き込む力を調節して、グー、チョキ、パーを自在に繰り出せる「じゃんけんピーヒャラ」。これらは全て、美大を卒業した藤村さんが考案し、形にしているという。販売しているものだけでも約50種類ある。

 例えば、「地獄のピーヒャラ」。プラスチックのジョイントを駆使して19本の筒を組み立てて吹く。なぜ地獄なのか? と思った方は、ぜひ吹いてみてほしい。19本の筒を伸ばし切るには、相当な肺活量が必要なのだ。顔を真っ赤にして吹き、吹いた後はゼーハーゼーハー。まさに、地獄である。

 市販しているもので筒の本数が最も多いのは地獄のピーヒャラだが、吹き戻しの里には、非売品である32本の筒をヒマワリの花のように配した「ヒマワリ君」もある。他にも、形に工夫が凝らされ、赤いヘルメットから17本の赤い筒が飛び出す「初日の出」や、キラキラと光る冠から17本の金色の筒が天に伸びる「王冠」なんてものもある。

 村田さんによると、藤村さんが2、30年前から構想を抱きながら、いまだ商品化できていない吹き戻しがあるという。それは「鼻の穴に差し、鼻息で吹く吹き戻し」だそうだ。村田さんは「通常の吹き戻しでは鼻の中を傷つける可能性もあるので、シリコンなどの新しい素材の吹き口が必要」とのこと。しかし、もし安全面や衛生面がクリアできれば……実現するかもしれない。(ライター・南文枝)


【「ヒマワリ君」と「初日の出」を実際に吹いてみた!】
https://www.youtube.com/watch?v=olp0-KBmL_s


トップにもどる dot.オリジナル記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい