こうした現状を鋭く指摘したのが、日本経済新聞が10月4日付で掲載した「改革待ったなし ラグビー界『失われた1年』」だ。この記事は多くのファンが支持。日本代表の畠山健介(サントリー)も「全てが書かれている。」とツイートしている。

 現状に危機感を抱いている選手は畠山だけではない。田中史朗(パナソニック)は、日刊スポーツが9月に掲載した連載企画「日本ラグビーを語ろう」の中で「昨季は満員にもなったスタンドも、今季は元に戻ってしまった。本当にさみしい」と嘆き、日本ラグビー協会に自己変革を強く求めた。

 一方、ワールドカップでの大活躍でラグビーブームを作った日本代表もまた、準備の遅れが目立つ。2019年に向けて日本代表を任されることになったジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)の就任は、本人のスーパーラグビーの契約を優先し、ワールドカップから1年後の今年9月。このため、昨年のワールドカップ以降に行われた日本代表戦7試合のうち、若手中心の選手構成で臨んだアジア選手権の前半4試合はU‐20日本代表の中竹HC、スコットランド戦など後半3試合はサンウルブズのハメットHC(当時)が、それぞれHC「代行」として戦った。ジョセフ体制になった日本代表は、ようやく10月10日に初練習。イングランド代表HCに転じた前任者のエディー・ジョーンズ氏が既にシックス・ネーションズとオーストラリア遠征を戦い、ラグビー発祥国復活への地歩を着実に固めて2シーズン目に入っているのとは対照的だ。

 ジョセフHCが初めて指揮する日本代表は、秩父宮ラグビー場で行われる11月5日のアルゼンチン代表戦に続き、欧州でジョージア、ウェールズ、フィジーと対戦する。10月10日現在の日本の世界ランクは12位。一方、対戦相手の4チームはいずれも日本より上位だ。ただし、伝統あるシックス・ネーションズの一角のウェールズ(世界ランク5位)、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアとともに南半球のラグビーチャンピオンシップを戦うアルゼンチン(同9位)が強豪である一方、フィジー(同10位)、ジョージア(同11位)は日本と同じ「ティア2」と呼ばれる世界の第2グループだ。

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