次に、EURO2016に参加する選手の招集もNG。ベンチで終わりそうなフル代表のEUROよりも、五輪で活躍したいという選手がいれば話は別だが、リロイ・サネは「五輪は素晴らしい大会だけど、僕の目標は当然EURO」と公言。フル代表を目指してアンダー世代を戦ってきたのだから、それが普通の反応だ。というわけで、サネのほか、ヨシュア・キミッヒ、ユリアン・ヴァイグル、エムレ・ジャンがリストから消えた。教え育てた選手の成長は嬉しいが、それが指揮官自らの首を絞めることになるとは皮肉である。

 一番厄介で分厚い壁はクラブチームの抵抗だ。五輪はFIFA(国際サッカー連盟)主催大会ではないため、クラブ側に選手をリリースする義務はない。五輪代表監督は頭を下げて選手の貸し出しをお願いするのである。ルベッシュ監督とフリックSDは各クラブに電話をかけ、メールを送り、直接赴き、交渉を行なった。合意を取り付けるまで、何度もそれが繰り返された。

 フリックSDは「クラブ側とは素晴らしい話し合いができた」と言っているが、ほとんどケンカに近いやりとりもあったと言われている。レヴァークーゼンのルディ・フェラーSDは「4人も出すクラブと、1人も出さなくていいクラブがあるなんて、言語道断だ」と頭から湯気を立て、ライプツィヒのラルフ・ラングニックSDも「ほかのクラブが一番の選手を貸し出すなら、うちも出すけど」と冷たかった。他クラブの反応も容易に想像できる。

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