また民法には、相続人の遺産の取り分(法定相続分)や、最小限の保障として相続できる財産の割合(遺留分)が定められています。

 しかし、遺言書を作成するときは、こうした法律上のルールを無視してもまったくかまいません。遺言書は、法定相続より優先するものとして扱われるからです。

 下に「遺言を気軽に残せる5つの心得」をまとめました。先延ばしにするのはやめて、いま自分ができることから遺言の準備を始めましょう。

【遺言を気軽に残せる5つの心得】

1.準備から始めよう
いきなり遺言書を書くのに抵抗感のある人は、まずは「自分が生まれてから現在まで」の戸籍謄本を収集したり、相続関係を把握するために「家系図」を作成したりするのもいい。

2.決めていることだけ書いてみる
「自宅の土地と建物は長男に残したい」など、心に決めていることだけを遺言にまず残してみよう。ほかの財産の残し方が決まったら、また新たに遺言を作成し直せばいい。

3.簡単に書けばいい
遺言は「妻に財産の4分の3、残りを子ども2人に均等に相続させる」など、割合だけの簡単な書き方でまったく問題ない。「誰にどの財産をどれだけ残すか、もらさず書き残そう」などと気負わないこと。

4.遺留分を気にする必要はない
「遺留分を侵害してはいけない」と思い込んでいる人もいるが、遺言は自分の財産を死後も自分の思うとおりに残すための権利として与えられたものだ。自分の考えを素直に書けばいい。

5.「とりあえず」が大事
遺言書は、本人に遺言能力がある限り、いつでも何回でも書き直しができる。気が変わったり状況が変わったりしたら作成し直せばいいので、とりあえず今の自分の考えを遺言書に残しておこう。

(監修/行政書士・竹内豊、取材・文/城川佳子)

※週刊朝日ムック『はじめての遺言・葬式・お墓』より

竹内行政書士事務所代表
行政書士・竹内豊

たけうち・ゆたか/中央大学法学部卒業後、百貨店勤務を経て2001年から現職。遺言・相続を専門として活動する。著書に『親に気持ちよく遺言書を準備してもらう本』(日本実業出版社)、『親が亡くなったあとで困る相続・遺言50』(共著、総合法令出版)など多数

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