実際、そうした費用も含めた「セット料金」を回答してきた動物病院もあった。飼い主にしてみれば、総額いくらかかるのか、オプションの説明も受けたうえで、把握しておきたいところだろう。

 日本獣医師会職域理事の細井戸大成氏は、動物病院の診療費の体系についてこう指摘する。

「手術や診療の料金は病院によってかなり違う。例えば不妊手術の場合、麻酔の仕方や縫合に使う糸の種類などによっても違ってくる。より詳しい検査を求めれば、料金も高くなります」

 設備面では、手術室と入院室の分離はほとんどの動物病院で徹底されていた。X線(レントゲン)による検査が可能なところでは、レントゲン室とそのほかの部屋との分離も当然行われていた。この意味では、動物病院内でのペットの安全は担保されていると考えていいだろう。

 また可能な検査項目については、基本的な項目で大きな差異は見られなかった。ただ、かなり特殊な検査が可能な病院も散見された。得意な診療科目があればその方面の機器が充実しているし、なかには診療科目を絞って集中的な投資をしているところもあった。特定の分野について、日頃から高度な医療を求めたいと考える飼い主は、そうした病院を選ぶと「近道」かもしれない。

 ただ検査項目が増えれば費用はかさむ。「検査漬け」にされるリスクもある。検査機器がそろっているということは、それだけの設備投資を行っており、そのぶん診察費が高めに設定されている可能性もある。

 自分のペットにどこまでの医療を施したいのか、飼い主自身が考えておく必要がありそうだ。

 診療費や設備については、情報収集によってある程度の判断が可能な一方で、今回の調査結果から見えてきたのは、飼い主にとってより重要なホームドクターとしての「街の動物病院」選びの難しさだ。

 獣医師1人など、限られた体制でやっている病院には限界があることは、飼い主も理解しないといけない。そのうえで、適切なタイミングで、信頼できる別の病院を紹介してくれるかどうかが大切だ。また一方で、今回の調査では「年間診療数」と「年間手術数」をたずねているが、いいホームドクターとこれらの数の多寡は必ずしもリンクしないかもしれない。

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