●海を渡った日本の信仰
明治30年には、浄土真宗本派本願寺(西本願寺)がハワイへ渡ってきた。明治36年には、"神さま"を祭ってハワイ大神宮が、明治39年には、出雲大社の分祀が建立されている。以後、東本願寺、曹洞宗、真言宗、浄土宗など各派仏教が、また各地の神社の神々が勧請されてハワイへ社を築いている。
第二次世界大戦時にはすべての寺社が没収され、日系人たちの信仰は禁止されたが、終戦後長い年月をかけ各寺社は復活、今に至っている。
●盆踊りと“BON DANCE”
元年者たちに代表される一世たちは、日本の心を子孫たちに伝えることをとても大事にしている。一世が伝える日本人の価値観は「恥」「恩」「我慢」「頑張り」の4つ。すでに日本に住む私たちは忘れてしまっているのではないだろうか。
そして日系人たちは、日本の文化を忘れないよう多くの慣習を継承しようとしている。お正月には鏡餅や門松、お年玉袋も用意される。
夏になると各地で盆踊りが行われる。すでに日本語がネイティブでない3世、4世たちも“BON DANCE”が大好きだ。
●日本より日本らしい行事に
日系アメリカ人を購読層とする英字新聞「ハワイ・ヘラルド」には、毎年ハワイ全島で開催される“BON DANCE”スケジュールが掲載される。2018年版によれば、6月2日~9月15日の間にオアフ島33、ハワイ島30、カウアイ島9、マウイ+ラナイ+モロカイ島15の合計87開催、できるだけ開催日が重ならないように各団体の間で調整が行われるのだそうだ。2年前に比べて4カ所増えている。
ブラジルでも同様、櫓(やぐら)が組まれ、炭坑節や東京音頭、場所によって出身者の多い県民音頭などが披露される。特に広島、山口、福島、沖縄からの移民の子孫は多く、自分のルーツの継承を求め、戦争中に断絶した文化を再構築しようと努めている人々も多い。
盆踊りは、死者を供養するための仏教行事ととらえられている。だが、海外では歌謡曲などがかかったり、現代風の踊りが披露されたりするなど宗教色はかなり薄まっている。その一方で、祖国日本に対する思いが込められた“BON DANCE”には、日系人が歩んできた苦難の道に対する供養が込められているのかもしれない。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)