――溜め込んでいたものとはなんだったのでしょうか?
大なり小なり誰しも抱えているものはあると思いますが「他人に言えないこと」が私にもやっぱりありました。
5年間、不妊治療をしていたことは他人には言えないことでした。不妊治療は30代後半から40代にかけてのときです。不妊治療は保険外の治療なのでお金もかかりますし、「次こそはできるかもしれない」と思うとやめられませんでした。
やっとの思いであきらめましたが、いまでも隣近所の子どもたちを見るとつらいものがあります。
不妊治療も他人に言いづらいことです。私だけじゃなくて、他の人たちも隠れるようにして診察を受けていました。
いま住んでいる自宅は義父の勧めで買った一軒家です。自分たちがほしくて買った家ではないため、愛着がわかず、夫も家のことには無関心でした。まわりには同じような年代の家族が住んでいますが、子どものいない私は近所付き合いもできず孤立していました。
だから誰にも言えず、自分でも気が付かないあいだに苦しさを溜め込んでいたんだと思います。
私が病んでしまった理由は、苦しい気持ちや寂しさを誰かに認められたかったからだと思うんです。夫はいつも仕事が忙しく、ご飯もいっしょに食べていませんでした。すれちがい生活の孤独を埋めるために、あえて趣味に没頭していたのかもしれません。
――マキコさん自身のうつ病やひきこもりの苦しい期間を抜けるために必要なことはなんだったのでしょうか?
主治医からは「すべてを受け入れなさい」と言われています。でも、これが難しいんです(笑)。
病院通いを始めたころ、主治医からは「家事をしようと思わなくていいから休みなさい。なにもしないことのほうが勇気がいるんです」とも言われました。そう言われて初めて「自分のことだけを考えればいいんだ」と思えたのが、私にとってのスタートラインでした。