――どんな状態になったのでしょうか?
日中、部屋のなかでも寒けを感じて震えたり、夜中、家のなかを徘徊せずにはいられなかったりしました。一日中、体が鉛のように重く、家事はもちろん通院以外の外出もできなかったです。
とにかくやる気が起きなんです、なにに対しても。おフロにも入る気になれないし、身だしなみを整える気にもなれないので、髪はいつもボサボサ。
だんだんとネガティブなことしか考えられなくなり、「笑う」こともほとんどなくなりました。
考えていたのは、まず、なにもできなくなった自分を責める気持ちです。それから、療養のために親元に戻ったため「こんな年になってまで親に迷惑をかけて」という罪悪感や「こんな自分は夫と別れなきゃいけない」という焦りも強かったです。
眠れずにいた晩に「もうダメだ、人生が終わってしまった」と感じて首を吊れる場所を探したこともあります。
風邪をひいてから数カ月で、一気にそういう状態まで追い詰められてしまったんです。
――「風邪がきっかけ」という話は初めて聞きました。自分の状況を受け入れるのに時間がかかったのではないでしょうか?
私もまさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。いろんな病院にも行きましたが、「ストレスですね」と言われるばかりで、自分の身に何が起きているのか、病気なのかさえもわからなかったです。
その後、いい先生にめぐり合えて「うつ病」だと診断されましたが、それでも受け入れがたいものがありました。
というのも、私は不登校もせず、ふつうに学校へ通っていました。高校を卒業してからは10年ほど働き、職場で出会った夫と結婚しています。子どもはいませんが、主婦になってからはスポーツクラブに通い、趣味もありました。スポーツクラブでは新しい友人もでき、家以外の居場所もあったと思っていたんです。
それが風邪をきっかけにして、自分のなかに溜め込んでいたものがバーンと弾けてしまったんでしょうね。