母乳中のアルコール濃度は、お母さんのアルコール血中濃度とほぼ同じになり、体重1キログラムあたり、お母さんが摂取したアルコールの5~6%を摂取することになります。同じ量のアルコールを飲んでも、お母さんの体格によって母乳中の濃度は変わってきますし、アルコールの代謝能力は個人差も大きいです。
また、一般的にお酒に弱いというと、お酒を飲むとすぐ赤くなる人を思い浮かべるかもしれません。しかしこれはアルコールではなく、アルコールの代謝産物であるアルデヒドの代謝速度が影響しています。日本人の約半数はアルデヒドの代謝が遅いのですが、アルデヒドは母乳中には分泌されないと言われていますので、これは少し安心材料かもしれません。逆に、顔が赤くならなくても、お酒が残りやすいタイプの人は要注意です。いずれにしろ、どのくらいのアルコールなら飲んで良い、という一定の見解はありません。少なければ少ないほど良い、というのが今の私の意見です。
とはいえ、お酒を控えることがほとんどストレスにならないお母さんもいれば、ものすごくストレスになるというお母さんもいらっしゃると思います。お酒をときどきちょっとでも飲めば、それだけでリラックスして笑顔で育児を楽しめる、ということであれば、その方が総合的に赤ちゃんのためになる場合もあるのかもしれません。
母乳中のアルコール濃度は、アルコール摂取から30~60分後が最大となると言われています。もし、どうしてもお酒を飲みたいという場合は、アルコール濃度の高くないものをグラス1杯程度に留め、授乳するまでに2~2時間半以上の時間をあけると、影響を少なくすることができると言われています。
個人差も大きい部分ですが、授乳中はお酒を飲まないことにするのか、飲むとしたらどのくらい飲むのか、リスクを知った上で判断していただけたらと思います。
◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表