今年の4月、キルギスのビシュケクからタシケントに向かった。モスクワ行きの列車に乗り、途中のシムケントで降りた。午前1時近かった。駅では余ったキルギスの通貨を両替できなかった。シムケントは列車の乗り換え駅だ。国際列車も多い。しかし両替所すらない。
駅前で待つタクシーで両替所に向かう。シムケントの中央を貫通する国道沿いの一画が妙に明るかった。
「なんですか、これ」
輝いているのは、すべて両替所だった。24時間営業。どこにしようか迷うほど店が並んでいる。国道を大型トラックが走り抜けていく。
中央アジアの国々が、旧ソ連から無理やり独立させられてから28年になる。独立直後、旧ソ連から大量の貨車や客車が中央アジアに送られたという。それは新生国への援助だったのか、それとも老朽車両の処分だったのか。
中央アジア諸国も当初、鉄道に頼っていたが、やがて車の時代に突入していく。独力で道を整備していく。そして、シムケントが交通の要衝になっていくのだ。中央アジア諸国の国境は入りくんでいるが、ひとつのエリアと見ると、シムケントはその中心に近い。
外観だけは立派なシムケント駅を思い出していた。おそらく旧ソ連時代に建てられたのだろう。しかし内部は閑散としていた。
これが28年という年月らしい。