■懸念される日程の“間延び”

 グループの後半に入っている国で初戦が空き日程になっているチームは、大会の開幕から登場までに10日ほど掛かることになり、逆に前半のグループで第3戦が空けば、かなり早い段階で敗退が決まるか、決勝トーナメントまでに2週間近い日数が経過する。これは、かなりの間延びと言わざるを得ない。調整のことを考えれば、空き日程になっているチーム同士で、大会中にトレーニングマッチを行うようなことも起こり得る。仮にそうなれば、自国のメディアはそちらを放送したがるだろう。しかし、大会中にそうしたことをFIFAが許容するかといえば、現在のさまざまな権利関係でガチガチになったW杯を思えば大きな疑問が残る。

 そして、大きな問題となりそうなのが、第3戦で両者の利害関係が合致してしまうパターンが多発すると予想されることだ。

 仮にある組の初戦でAチームがBチームと引き分け、第2戦のBチームとCチームの試合はCチームが勝利で終えたとする。この場合、第3戦は勝ち点1のAチームと、勝ち点3のCチームによる対戦になる。1分1敗で終えたBチームは試合がなく、Cチームの勝利を願うばかりになる。しかし、この試合は両者が引き分けで終えれば共に決勝トーナメントに進める状態だ。そしてCチームはすでに決勝トーナメント進出を決めているだけに、モチベーションの問題は試合前から生まれていることになる。

 ロシア大会では日本の1次リーグ第3戦となったポーランド戦で、最後の10分ほどに両チームが全く攻める意思を見せなかったことが批判を浴びた。しかし、その場合と大きく違うのは、日本は突破に関わる同時開催の試合の行方が分からないというリスクを背負って決断したのに対し、この3チームによるグループの最終戦はノーリスクだという点だ。すでにBチームは試合を終えているため、その成績が変動する可能性はない。

 例えば、前述のBチームが2点差で敗れており、CチームがAチームから先制点を挙げた時、Aチームは敗戦を許容して全く攻撃に出ない選択肢を取ることもできる。Cチームからすればノーリスクで勝利が手に入る以上、その“誘い”に乗る可能性は少なくないだろう。

 16組あれば、こうしたノーリスクの最終戦が生まれる場所は複数発生すると考えた方が良いだろう。本来であれば、グループ突破の悲喜こもごもが生まれ、最大のドラマが生まれるのが最終戦だった。例えば、日本とポーランドの試合の例で言えば、一足早く日本の試合が終わった後、セネガル対コロンビアの試合に一気に視聴者が移り、最高視聴率では日本戦を上回ったとの報道もあった。しかし、当然ながらこうした「ハラハラドキドキ」は生まれ得ない。逆に、延々とボール回しを見せられる場面は多くなると予想される。そこで正義感に駆られて攻撃し合うような試合を期待するには、W杯は舞台として懸かっているものが大きすぎるからだ。

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アジア予選の魅力も半減?