家庭を持った友人に、

「美紀ちゃんにも幸せになって欲しい」

 なんて言われて、

「それだけが幸せじゃないだろう」

 と反発する想いを抱いていた。だけど、以前何かの番組の中で、占い師に、

「100まで生きる」

 と言われて、

「老後が長い!!」

 と思った衝撃が残っており、一人じゃ寂しいかもなあ、なんて漠然と考えたりはして。

 そんな折に突然現れたのが今の夫である。よく、ビビビッときた! と言う人があるが、私はビビビとまではいかないにしろピンとくるものを感じたのである。

 外国で日本人に出会った時のような親近感を覚えたのだ。

 で、結婚

 その時点で私は42。

 子どもは諦めていた。子どもができて生活が変わることが怖かったし、現時点での生活に満足していた。だけど、チャレンジだけはしておこう、と夫婦で話し合った。

「やれるだけやった」

 と自分たちの気持ちにケリをつけるために。

 まずはタイミング法。

 これだとチャンスは月に1回。はたして……。

 なんと2周期目にして見事着床! ちょうど「黒い十人の女」の撮影が終わった頃だ。その後すぐに自分の演劇ユニットの公演の稽古を1カ月やって、本番2週間。

 その公演が終わってしばらくして身体の異変に気付いた。

「あー、疲れが取れない。年ねえ」

 なんて思っていたけど妊娠だった。

 ぶっちゃけてしまうと、私はその時、欲しい気持ち、欲しくない気持ち、半々だった。

 だけど、検査薬に陽性の反応が出ているのを見た瞬間は、嬉しくて感動してしまった。こんな私が母になって良いのだろうかと申し訳ない気持ちにもなった。

「さあ、覚悟を決めなきゃ」

 喜び合った後、口には出さなかったけどお互いにそう思った。

 この日を境に生活は一変した。

 酒、カフェイン、ヘアカラー、辛いもの、マッサージ、一部の化粧品、運動(安定期まで)。

 妊娠中にはたくさんの制限がある。

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母になるのはホルモンのおかげ?