さらに、できるならインターネットを見すぎないことです。人は不安なときに情報をほしがり、特にインターネットでは自分が怖いと思う情報を際限なく見てしまいがちです。もちろん、過去の教訓や緊急物資の情報を得たり、同じような悩みを持つ人がほかにいることがわかるなど、いい面もありますが使いすぎは良くありません。
――日本中が盛り上がるサッカーW杯が始まりました。自粛と明るい情報とでは、どちらが必要なのでしょうか。
原始時代に100人のグループがいて、1人が亡くなって、5人がけがをしたとしましょう。「近い人」は悲しみに共感することで援助につながりますが、残る94人全員が同じように反応していたらどうでしょうか。疲れがたまり、長い目で見ると集団の危機対応力は落ちてくるでしょう。遠い人には、気分を変えて活力を保ち、次の危険に対処するという役目があります。楽しめる人は思いっきり楽しんでほしいと思います。
「中間の人」には程度の濃淡があるので、明るい雰囲気の場所に少し行ってみて、嫌な感じがしたら控えればいい。大事なのは物理的な距離や思い込みで、自分の状態を決めつけないことです。さらに心の状態は時間とともに変化します。先週の第1戦は行けなかったけど、次の第2戦は行けるかもしれません。日本代表チームも勝ったことですし。くれぐれも気分を変えようと、無理にはしゃいだり夜更かししたりしてはいけませんよ。
(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)
下園壮太(しもぞの・そうた)/1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援で得た経験をもとに独自の理論を展開。2015年8月に定年退官。現在はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長。『自衛官メンタル教官が教える 人間関係の疲れをとる技術』など著書多数