これまで国歌が変更される時は国の体制が変わる時であることが多かった。しかし現代においては男女平等など社会の変化に合わせて変更する流れができつつある。

 さらにチェコでは同国のオリンピック委員会が今年3 月、短いと45 秒しかない自国の国歌が短すぎて金メダリストが表彰台で脚光を浴びるには短かすぎるから変更してほしいと提案して話題になった。

「ヨーロッパではおそらく2番目に短い国歌でしょう。(他国の国歌の)平均は80秒ですよ。アスリートたちが彼らの成功を楽しむ時間がないのは残念だ」

とチェコオリンピック委員会のジリ・ケヴァル会長はコメントしている。

■スペインは歌わない、南アフリカは5言語

 サッカーのスペイン代表選手たちの国歌斉唱を見ると、口を開けず流れるメロディーに聞きいっている。実際、スペイン人の友人に「国歌を歌ってほしい」とお願いするとメロディーを鼻歌で歌いだした。理由を聞くと歌詞がないからだという。スペイン国歌『国王行進曲』は数少ない歌詞のない国歌だ。非公式の歌詞はあるが公式の歌詞がない。理由は中央政府が歌詞をつけるたびにバスクやカタルーニャなど独立を求めている地域から不満が出るためだ。

 歌詞がない国歌としてボスニア・ヘルツェゴビナも挙げられる。『ボスニア・ヘルツェゴビナ国歌』は歌詞がないことから別名『間奏曲』とも呼ばれている。歌詞が付かない理由は地域の問題ではなく民族問題だ。同国はボシュニャク人、セルビア人、クロアチア人が共存しているが民族間の対立が残る。歴史的背景が大きく関係していることに加え、それぞれ宗教が違う点や多くの政党が民族ごとに構成されているなど民族間の対立がとても複雑だ。過去、歌詞をつけようと何度も試みられたが、そのたび内容に対して反対の声が出て断念されてきた。最近だと2009年、サッカーW杯欧州予選において同国が本大会出場をかけたプレーオフに初めて進出したことをきっかけに国内で歌詞をつけようという動きが強まった。活動に賛同した著名人も多く、その中には過去日本代表の監督を務めたイビチャ・オシムもいた。しかし一部の政党が承認を拒否し、議会で制定案が否決されてしまっている。

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南アフリカは5言語