■カナダは歌詞変更「男女平等」理由に

 国歌は"変わらないもの"というイメージはないだろうか。しかし世界に目をやると意外と変化やその兆しが見える。

 2012年1月、オーストリアが男女同権の立場から、歌詞の「偉大な息子たちの故郷」の部分に「娘たち」を加え「偉大な娘たち、息子たちの故郷」に変更した。2015年にはスイスで国歌を変更したいという民間団体が新国歌候補を決めるインターネット投票を行い、国歌変更の手続きを進めている。昨年はモーリタニアが国旗と国歌を変更。クック諸島では議会が首相に歌詞変更を提言している。

 今年に入るとサッカーW杯で日本代表が対戦するセネガルで、2019年の大統領選に出馬する現職の対立候補が国歌変更を公約に挙げている。

 こうしてみると変更の動きは結構あるが、その中でも今年もっとも話題になったのはカナダ国歌の変更だろう。2月、カナダ国歌『オー・カナダ』の歌詞を一部変更して性別を問わない内容にする法案が成立した。具体的には「True patriot love in all thy sons command(汝の息子すべてに流れる真の愛国心)」の後半、「in all thy sons command」という部分を「in all of us command」に変更する。

“sons”というのが男性しか指しておらず、女性が含まれていないという意見が以前からあり、特にオリンピックにおいて、金メダルを獲得した女性が表彰台で「全ての"息子"が持つ愛国心」と歌うことに疑問の声があった。法案が上院を通過したことを受けて、元パラリンピック車椅子競技の選手で14個の金メダルを獲得したケベック州のシャンタル・プチクレール上院議員は

「私は何度も表彰台に上がる特権を持っていたが、“わたしたちに流れる真の愛国心”と歌う機会はなかった。 彼ら(平昌五輪参加選手)が表彰台に立っている時の想いを想像する。それは素晴らしい瞬間です」

とコメント。平昌冬季五輪に向かうカナダ代表選手たちが新しいバージョンで歌うことに嫉妬しているとも語った。

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